2006 Fiscal Year Annual Research Report
心血管デバイスの物理的因子に起因する血球の損傷・破壊現象に関する総合的基礎研究
Project/Area Number |
05J03690
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
渡邉 宣夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 赤血球変形能 / 振動準クエット流れ / 心血管デバイス / 血液ポンプ / 溶血 / 血液適合性 |
Research Abstract |
【血球変形の理解】従来、血球変形・流動挙動は、一様せん断流れやシンプルなせん断状態のみ明らかで、変動せん断下では、未だ厳密に理解されてない。本研究は、正弦曲線的なせん断変動に対する赤血球の動的な変形流動を直接評価できるシステムを開発した。このシステムを用いたヒト赤血球の流動・変形応答評価実験から、正弦的なせん断応力作用に対して、赤血球は急激な形状進展と粘弾性的な形状回復を示す事を明らかにした。 【血液ポンプと変形能】心血管デバイスの血液適合性評価は、結果的に生じる溶血量(血漿中遊離ヘモグロビン量)と抗血栓性が評価される。一方、せん断に起因し、赤血球変形能は低下する事が間接的評価方法により示唆されるが、デバイス使用時の血球変形能は従来全く無視されて来た。変形能低下は抹消循環不全や突発性貧血などを誘発する危険性がある。従って、デバイスの血液適合性評価は、従来の方法に加え変形能も評価する必要性が考えられた。そこで、開発したシステムを用い、臨床血液ポンプを例にとってデバイスに起因し血球変形能低下が生じるか検証した。その結果、ポンプ駆動時間と共に溶血量は増大した一方、8時間のポンプ駆動によらず、血球変形能は優れたまま持続した。この事実から、2つの仮説(変形能は破壊に至る直前まで持続する、あるいは非生理的なせん断負荷により、血球膜を介してヘモグロビンが徐々に溶出する)を提案した。 【一様せん断と変形能】高粘度溶液内の赤血球に一様せん断応力23,43,64Paを負荷し、経時的に変形能を評価した結果、43Pa以上の応力に対し変形能は応力と時間と共に低下した一方、23Paに対しては60分後も変化は無かった。本研究は、せん断負荷による変形能低下現象を定量評価出来た。せん断による変形能低下現象と細胞加齢に伴う変形能低下現象との間には類似性があるが細胞加齢現象解明には更なる検討を要する。
|
Research Products
(5 results)