2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J03721
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
永田 英理 学習院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 俳諧 / 付合文芸 / 詩学用語 / 俳論 / 七名八体説 / 歌学史 / 芭蕉 / 心敬 |
Research Abstract |
蕉風連句の独自性について明らかにするため、芭蕉の俳論を歌論・連歌論・中興期以降の俳論という詩歌論史の系譜の流れのなかに位置付けて検証することによって、以下のような結論を得た。 (1)支考の「七名八体」説のなかから「拍子」の手法を取り上げ、その変遷について検証した。その結果、「拍子」とは能楽論から取り入れられた用語であり、語呂の良さをいう一句の音調と、蕉風俳論に説かれる「走り」に通ずる、二句間の付け味について評する語であることが確認された。支考は『十論為弁抄』でその二面性について、「詞の拍子」と「心の拍子」とに分けて論じている。蕉風連句においては、「拍子」を過剰に追究するあまりに「句の姿」を失ってはならないとされており、それこそが談林俳諧とは異なる、蕉風俳諧の独自性であった。ところが芭蕉以後、伊勢派の俳諧では涼菟・凉袋らを中心に、「拍子」を重視する作風がまた再び流行し始めるのである。 (2)連歌論において多用される「感情(かんせい)」という用語に着目して、「感情あり」と評される作風が、連歌・俳諧・近世和歌においてどのように異なるかについて検証した。その結果、元来は心敬の「疎句体」の付合のもつ詩情を評して使われていた「感情」という用語が、近世においてはまず、初期蕉風俳諧の「貞享連歌体」と呼ばれる作風を評するうえで取り入れられていたことが判明した。だが時代が下ると、支考の「姿先情後」の説における「情」の意に転用されてゆくのであった。支考の「姿先情後」は、歌論の景気論を継承しつつも、直接的には漢詩の「景情論」の影響によるものだと考えられてきたが、そこには連歌論における「感情」の概念も関わっていたのである。
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Research Products
(2 results)