2005 Fiscal Year Annual Research Report
Fr・シュレーゲルにおける美・芸術と共同体の相関関係の研究
Project/Area Number |
05J03820
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 均 神戸大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 美学 / 独文学 / 倫理学 / 政治学 / ドイツ |
Research Abstract |
今年度はドイツ・ポツダム大学哲学科のクリストフ・メンケ教授のもとで約十ヶ月間研究に従事した。 この間行った研究は、主に以下の五点に整理できる。 1.古典文献学時代(1794-1797年)のシュレーゲルの政治論文「共和制についての試論」(1796)における個人と共同体との関係について、とりわけカントの『永遠平和のために』(1795)と対比する研究を続行し、成果を『美学藝術学研究』第23号掲載の論文として発表した。 2.次に、ロマン主義的シュレーゲル(1797-1802年)における個体性と全体性との関係について明らかにすべく、「アテネーウム断片集」(1798年)における「理想」概念の内実を分析した。シュレーゲルは、シラーの理想概念が個体性を欠いていることを批判するが、それだけでなく、カントの理想概念では理想の実在性が否定されているのに対して、彼は理想を人格として捉え、理想と思想家、芸術家の関係を、友愛との類比で捉えている(これについてポツダム大学哲学科で口報告を行った)。こうした思想の背景として『哲学の発展』講義(1804年)で展開された原自我論があり、彼の「共同哲学」・「共同文学」の構想もこれを背景として理解できると仮説を立て、現在研究甲である。 3.ロマン主義的シュレーゲルの小説『ルツィンデ」(1799年)についての研究では、既に明らかになった、シュレーゲルが恋愛と友情を芸術創造にとっての必須条件と考える一方、それぞれを女性性と男性性と関運づけている、という知見をさらに深め、後者の友情のモデルが宗教的共同体であるという仮説を立てて、調査を続行中である。 4.また、「神話についての演説」(1800年)については、古典文献学時代のシュレーゲルとの古代観の相違、また神話と神秘との関係に着目して分析を行っている。 5.さらに、研究協力者を雇用し、『哲学の発展』講義の一部をデータベース化した。
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