2007 Fiscal Year Annual Research Report
Fr・シュレーゲルにおける美・芸術と共同体の相関関係の研究
Project/Area Number |
05J03820
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 均 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 美学 / 独文学 / 哲学 / ドイツ / ロマン主義 |
Research Abstract |
当該年度の研究実績は、主に以下の三点に整理できる。 (1)シュレーゲルの小説『ルツィンデ』(1799年)の研究成果を『美学』に投稿し、修正を経て掲載された。修正の段階では、芸術創造における親密性の役割についてのシュレーゲルの思想を、社会学者ニクラス・ルーマンの親密性に関する理論と関連づけて、シュレーゲルの歴史的な位置づけを明確にすることを試み、恋愛と友情との関係、親密性と芸術との関係についてシュレーゲルの思想に独自性があることを指摘した。 (2)シュレーゲルにおける「新しい神話」と公教性/秘教性の問題を検討し、研究成果を国際美学会議で発表した(英語)ほか、『ドイツ文学』に研究論文として掲載された。論文執筆の過程において、重要な先行研究であるD.v.Petersdorff"Mysterienrede"との関係について再検討し、研究の独自性を明確にした。特に、1800年頃までのシュレーゲルは、公教性と秘教性を厳密に対立させず、両者の性格を併せ持った言語形態として「アイロニー」を構想したことを指摘した。 (3)これまでの研究成果を統一的な視点のもとにまとめる作業を行った。具体的には、これまでに発表した研究実績を相互に関連づける、シュレーゲルの「アイロニー」、「ロマン的文学」の概念を改めて整理する、またシュレーゲルの各時期における文学ジャンルの理論を整理するなどの課題に従事した。シュレーゲルの理論をさらに歴史的コンテクストのうちにおく作業は、いまだ途中段階にある。
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