2005 Fiscal Year Annual Research Report
哲学の再定義としてのドゥルーズ哲学:その批判的継承のための基礎的研究
Project/Area Number |
05J03823
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原 一樹 神戸大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 強度 / アフェクト / 監視社会 |
Research Abstract |
本研究の日的は、三つの基本的問題((1)哲学と自然・社会諸科学との関係の問題、(2)哲学の社会的役割の問題、(3)哲学の今後の可能性の問題)を、ドゥルーズ哲学を参照項としつつ解明することであり、それは同時に来たるべき「哲学という名に値する新たな思考形態」の模索の試みでもある。 本年度の個別目標「ドゥルーズ哲学の内在的理解」の推進については、「強度」・「アフェクト」というドゥルーズ哲学の中心的諸概念の再検討を、ドゥルーズ自身の言説と彼が利用した哲学・自然科学・社会科学の文献を参照しつつ遂行した。研究発表「ドゥルーズ哲学におけるアフェクト概念の内実と意義について」(05年4月・哲学会「カント・アーベント」)では、スピノザに由来する「アフェクト=触発」概念のドゥルーズ的展開について、「生成の度合い」という独自の視点や「スタイル」概念との繋がりに着目しつつ検討し、各人が通暁する実践における「スタイル」の構築が「新たなアフェクトの創造・贈与」を齎すことを解明した。また、「強度」概念については、『差異と反復』第5章で参照される諸論者(パリアール・プラディーヌ・ピアジェら)の言説の緻密な再検討を通じ実証科学との繋がりを解明しつつある。(この成果は論文「強度概念再考-内在的理解と現代的展開」として06年発行予定の『ドゥルーズ&ガタリ論集』〔人文書院〕に発表する。) 加えて、『環境-安全を確保すること』(松永澄夫編)所収論文「監視社会化の何が問題か」においては、ドゥルーズが晩年に警鐘を鳴らした「監視社会」に関する理解を深め、更新した。監視カメラ・バイオメトリクス等の技術の社会への導入によりいかに我々の生にとり根本的な「自由。平等・時間・空間」が変容しつつあるかを考察した本論文は、「ドゥルーズ哲学の理解の深化」と並立する、もう一つの本研究の目的「哲学という名に値する新たな思考形態」創造の試みでもある。
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Research Products
(1 results)