2006 Fiscal Year Annual Research Report
哲学の再定義としてのドゥルーズ哲学:その批判的継承のための基礎的研究
Project/Area Number |
05J03823
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 一樹 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 強度 / 監視社会 |
Research Abstract |
本研究の目的は、三つの基本問題((1)哲学と自然・社会諸科学との関係の問題、(2)哲学の社会的役割の問題、(3)哲学の今後の可能性の問題)を、ドゥルーズ哲学を参照項としつつ解明することである。それは同時に、来たるべき「哲学という名に値する新たな思考形態」の模索の試みでもある。 昨年度より、ドゥルーズの前期主著『差異と反復』、その中でも特にドゥルーズ哲学の要を為す「強度」概念につき、その具体的内実をドゥルーズが参照を指示する諸科学の言説群へ遡行して解明しようと試みてきた。今年度完成した論文「強度概念再考-その内在的理解の深化に向けて」では、主に心理学者J・パリアール、M・プラディーヌの言説を綿密に解読し、ドゥルーズ自身の主張と突き合わせることで、彼が提出する「強度」概念の含意が従来の研究レベルを超える深い次元で解明された。それを踏まえ目下、ドゥルーズが参照を指示する発達心理学者J・ピアジェの言説の解読を進めており、投稿予定論文「行動と強度-ピアジェから見たドゥルーズの<強度>」においては、更に「行動」という視点から「強度」概念の内実理解を深める予定である。 以上のようにドゥルーズ哲学の内在的理解の深化を進めつつ、本年度は他方で雑誌媒体によるアウトリーチ活動を行った。昨年度の共著書『環境-安全という価値は・・』(松永澄夫編・東信堂)所収論文「監視社会化の何が問題か」に関して、東洋経済新聞社より雑誌『週刊東洋経済』(06年5月20日号)への記事掲載の為の取材を受け、現在の日本社会が向かいつつある「監視社会化」について上記論文をベースに解説を加えた。ドゥルーズが萌芽的形態で有していた「監視社会化」というテーマを現代日本社会に適用し執筆した論文をベースに、その内容を咀嚼しつつ一般社会向けに提言を行ったという意味で、この作業はアカデミックな哲学研究の「アウトリーチ活動」だと称されよう。
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Research Products
(1 results)