2006 Fiscal Year Annual Research Report
高速時間分解振動分光による新規光センサータンパク質の構造変化と機能発現機構の解明
Project/Area Number |
05J03882
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水野 操 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 時間分解振動分光 / 共鳴ラマン散乱 / 光センサータンパク質 / タンパク骨格構造変化 |
Research Abstract |
光反応によるタンパク質の生理機能は、発色団の光吸収により誘起された構造変化の周辺タンパク骨格への伝播によって発現する。本研究は、実験方法として種々のタンパク質に対するピコ秒時間分解紫外共鳴ラマン分光法を確立し、これを用いてタンパク骨格の光誘起構造変化の伝播過程の追跡することで、タンパク質の機能発現機構を解明することを目的としている。 本年度は、実環境に近い条件(室温・溶液/懸濁状態)下における時間分解ラマン測定の困難さを装置の改良によって克服した。これにより、代表的な光センサータンパク質であるイエロープロテイン(PYP)と古細菌のプロトンポンプを担うバクテリオロドプシン(BR)について、タンパク分子中に含まれる芳香族アミノ酸残基(チロシン、トリプトファン)のピコ秒時間領域における振動ラマンバンドの変化を実時間観測することに成功した。 1.PYP: 発色団(p-クマル酸)に直接水素結合しているチロシン残基の紫外共鳴ラマンバンド強度が、光照射直後に減少し、その後一部回復した。これは、発色団とチロシン残基との水素結合強度が、発色団の光励起およびそれに続く光異性化に伴って変化したためと考えられる。また、トリプトファン残基のバンド強度が数ピコ秒以内で減少した。トリプトファン残基は発色団から10Å以上離れた位置にあるため、PYPは非常に速くタンパク骨格の構造変化をすることを見出した。 2.BR: 膜タンパク質であるBRの時間分解ラマン測定方法を確立した。発色団(全トランスレチナール)の光異性化に伴い、その近傍に位置するトリプトファン残基のバンド強度が変化した。これらのトリプトファン残基は、BRのプロトンポンプ機能に重要な水分子と水素結合していることが知られているため、さらに詳細な追跡を行っている。
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