2006 Fiscal Year Annual Research Report
癌原遺伝子産物Src型キナーゼの細胞内局在解析による機能解明へのアプローチ
Project/Area Number |
05J04118
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
笠原 広介 千葉大学, 大学院薬学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 癌 / シグナル伝達 / チロシンリン酸化 / 細胞内トラフィック / 細胞分裂 / ゴルジ装置 |
Research Abstract |
細胞内蛋白質の多くは局在が厳密に制御され、特定の細胞内領域に存在している。Src型キナーゼはc-Src/Lyn/c-Yes/Fyn/Lck/Hck/c-Fgr/Blkの8種類から成り、細胞内小器官にも局在するが、Lynとc-Srcは異なる細胞内局在をしていることから、細胞内のリン酸化シグナルにも違いが生じ、細胞に及ぼす影響も異なってくると予想される。Src型チロシンキナーゼは、N末端脂肪酸付加によって細胞膜に係留し、細胞膜直下において、受容体からのシグナルを伝達し、増殖・分化・運動・生存・形態変化などに深く関与すると考えられている。Lynは免疫細胞に、c-Srcは破骨細胞に、Fynは神経細胞で互いに相補できない機能を有していることが既に報告されているが、細胞表面膜直下以外では、機能は殆ど明らかでない。 本研究では、Src型キナーゼの細胞内小器官での機能解明のアプローチとして、Src型キナーゼの細胞内輸送経路と局在を研究した。貪食細胞や癌細胞などでは、外界から栄養などを取り込むためにマクロピノソームの機能が亢進していることが知られている。マクロピノソームにc-Srcが脂質アンカーで係留していることが明らかとなり、さらに、緑色蛍光蛋白質融合c-Srcを生細胞でモニターすると、細胞膜で生成したマクロピノソームが細胞内へと輸送されてゆくことがリアルタイムで可視化できた。また、マクロピノソームの生成とリソソームとの融合にc-Srcキナーゼ活性が必要であることも明らかとなった。さらに、c-Srcの仲間であるLynやc-Yes、Fynはマクロピノソームには殆ど係留されなかったので、Srcファミリーメンバー間での機能の差異が見い出された。さらに、細胞分裂の最後のフェーズはミッドボディー構造の切断を含む細胞質分裂期と呼ばれている。Src型チロシンキナーゼ酵素活性はそのミッドボディー切断に深く関わっていることが見い出された。Srcキナーゼのシグナル伝達下流でErkが活性化され、Rab11陽性の輸送小胞によって活性化型Erkがミッドボディーまで運ばれて、切断に関わることが示された。
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Research Products
(3 results)