2006 Fiscal Year Annual Research Report
異なる作用を持つ2系統のWolbachia重複感染:その相互作用と宿主との共進化
Project/Area Number |
05J04151
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
成田 聡子 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 共生微生物 / Wolbachia / メス化 / 性決定 / 分子系統学 |
Research Abstract |
1.【研究発表(2)】重複感染・単感染それぞれのキチョウ体内のWolbachia局在・密度とその相互作用 日本には1種類のボルバキアwCIに単感染して強い細胞質不和合を引き起こすキチョウが存在し、種子島にはwCIの他にwFemにも感染している2重感染のキチョウが存在してメス化を引き起こしている。この研究では、この2種類の感染タイプのキチョウにおける各ボルバキアの次世代への垂直伝播率と宿主体内における密度変化を各器官、各発育ステージごとに比較した。垂直伝播率において、wCIは2重感染個体であろうが、単感染個体であろうがほぼ確実に100%次世代に伝播していたが、wFemは伝播ミスが多く、平均伝播率は80%であった。また、どの器官であってもwFemはwCIに比べてばらつきが大きく1000-10000倍も低密度であった。また、wCIの密度とwFemの密度の相関を調べたが、この2種類のボルバキアの密度には相関関係が見られず、2重感染状態であっても互いのボルバキアは密度における相互作用がないとこが分かった。 2.【研究業績(3)】つくば産個体群における性比異常現象の発見 性比異常をおこしていないキチョウ個体群の場合、野外の性比はオスに強く偏る傾向にある。これは雌雄で野外における行動が異なるからである。しかし、筑波産キチョウ個体群の野外性比が明らかに異常で、メスに偏る野外性比となっていた。さらに、飼育実験を行った結果、筑波産個体群の次世代の性比は1:1から離れており、平均して75%がメスであった。性比異常の原因因子を特定するため、まず共生細菌の可能性を疑い、メスに偏る系統に抗生物質処理を施した結果、性比は1:1に回復した。このことから、性比異常の原因因子は共生細菌である可能性が強まった。その後、性比異常を起こした個体から共生細菌を同定した結果、それらの個体からはwCI系統のボルバキアのみが検出された。wCI系統のボルバキアは他のキチョウ個体群では性比異常を引き起こすことはなく、細胞質不和合の効果しか持たない。しかし、筑波産個体群ではwCI系統のボルバキアが性比異常の原因因子であった。
|
Research Products
(5 results)