2007 Fiscal Year Annual Research Report
異なる作用を持つ2系統のWolbachia重複感染:その相互作用と宿主の共進化
Project/Area Number |
05J04151
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
成田 聡子 Chiba University, 大学院・園芸学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 共生微生物 / Wolbachia / メス化 / 分子生物学 / 分子系統学 / 生態学 |
Research Abstract |
新たに発見されたメス化以外のメカニズムで引き起こされる性比異常現象 性比が1:1であるキチョウ個体群では、採集される個体の性比はオスに強く偏る傾向にある。これは雌雄で野外における行動が異なるからである。筑波産キチョウの採集目的は、初め、他の研究テーマのコントロールとなる個体を得るためであった。しかし、採集を開始してすぐ、筑波産キチョウ個体群の野外性比が明らかに異常で、メスが多いという印象を受けた。そこで、筑波個体群の野外性比を何度か調査し、他の個体群と比較した結果、明らかに筑波個体群だけがメスに偏る野外性比となっていた。さらに、飼育実験を行った結果、筑波個体群の次世代の性比は有意にメスに偏っていた(8割弱がメス)。次世代の性比がメスに偏る原因として考えられるのは「オス殺し」と「メス化」であるが、次世代すべての核型観察により、メス化は否定された。また、性比異常の原因因子を特定するため、まず共生細菌の可能性を疑い、メスに偏る系統に抗生物質処理を施した結果、性比は1:1に回復した。このことから、性比異常の原因因子は共生細菌である可能性が強まった。その後、性比異常を起こした個体から共生細菌を同定した結果、それらの個体からはωCI系統のボルバキアのみが検出された。ωCIは他のキチョウ個体群では細胞質不和合を引き起こし、性比異常は引き起こさない。しかし、筑波個体群ではωCIが性比異常の原因因子であった。この理由として、キチョウの遺伝的背景の違いが想定されるが、それについては引き続き研究していくつもりである。
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Research Products
(13 results)