2006 Fiscal Year Annual Research Report
音声学習と文法創発に関わる神経回路の発生学的同定:鳥類の種間比較に基づく研究
Project/Area Number |
05J04196
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松永 英治 独立行政法人理化学研究所, 生物言語研究チーム, 特別研究員(PD)
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Keywords | 発生学 / 神経回路形成 / 神経行動学 / 進化 / 多様性 / 鳴禽類 / 分子的基盤 / 歌学習 |
Research Abstract |
鳥類の中でも鳴禽類は、幼鳥期に歌を学習することで知られる。鳴禽類の脳内には、「歌制御系」と呼ばれる神経回路網が存在しており、歌の学習や産出の基盤として働く。これに対し、歌学習能をもたないニワトリやハトは、このような回路網を持たず、鳴禽類とは明確な違いを有する。本研究は、歌制御系形成過程の分子機構を明らかにするとともに、歌学習能を持たない他種との比較研究より、進化の過程で歌制御系を獲得し、さらには歌学習能を獲得し発達させた分子的基盤を明らかにすることを目的としている。昨年度は、歌制御系の形成に関わる候補遺伝子のスクリーニングを行い、多くの候補因子を見出した。本年度は、まず昨年度の研究により得られた候補遺伝子群について、歌制御系の形成や歌の発達との関係性という観点から、発達期を追った発現パターンの解析や、トレーサーを組み合わせた発現細胞種の同定などより詳細な解析を行い、歌制御系の形成や、歌学習に関与する可能性について検討した。さらにこれらの候補因子群が、実際に歌制御系の形成や、歌学習の過程に関与するかどうかを探るべく、レンチウイルスベクターを用いた機能解析を試みた。まずGFPレンチウイルスを作製し、幼鳥の脳内に様々な条件下で注入し、遺伝子強制発現実験系を確立した。ついで実際に、候補因子の機能解析を開始した。艀化後20日の幼鳥の脳内にGFPを発現させたコントロール個体では、歌学習は正常に行われたが、歌学習開始時期においてのみ、歌神経核のひとつであるRA核で一過性の強い発現がみられる因子を、レンチウイルスにより強制発現させた個体では、成鳥後も、未発達な歌しか歌わず、歌学習の進行が阻害されていた。現在、RNAiを用いた機能阻害実験などを行い、この興味深い因子についてさらなる機能解析を進めるとともに、他の候補因子についても、同様の手法を用い、機能解析を進めている。
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Research Products
(1 results)