2005 Fiscal Year Annual Research Report
高圧NMR法による蛋白質の広い構造空間解析に基づく構造・機能相関原理の研究
Project/Area Number |
05J04200
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
北原 亮 独立行政法人理化学研究所, 横山構造分子生物学研究室, 特別研究員(PD)
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Keywords | 圧力 / NMR / 蛋白質 / 変性 |
Research Abstract |
高圧NMR法は、圧力、温度可変条件下でのNMR測定を可能にする世界的にユニークな方法論である。広い圧力(0.1-300MPa)、温度(-23℃〜90℃)範囲のNMR測定に基づいて、様々な蛋白質で基底構造(いわゆる天然構造)を超えた高エネルギー構造の検出に成功している。今年度十分な成果が得られたものを業績として紹介する。 1.進化的に類縁で、配列相同性が高く、基底構造の類似性が高い蛋白質ubiquitinとNEDD8について、高圧NMR測定を行い新しい相違点を発見した。機能ストラテジーの類似した両蛋白質は、類似の高エネルギー構造をもつことが新たに分かった。さらに、高エネルギー構造の安定性には大きな違いが見られた。この結果は、2つの蛋白質は、類似した構造設計を持つものの、熱力学的安定性の設計は大きく異なることを意味する(投稿準備中)。 2.Ubiquitinについて、圧力条件下で-23℃〜90℃までの広い温度範囲でNMR測定とFTIR測定を行うことにより、熱・低温変性について3次構造、2次構造レベルの解析を行った。これまでの我々の圧力変性の研究から、ubiquitinは局所変性構造が存在することが明らかになっている。低温下でも局所変性構造は安定化されるものの、その割合は圧力のそれに比べ極めて低く、より協同性の高い変化であることが分かった。構造間の自由エネルギー変化ΔGは圧力の場合、その体積差ΔVが支配的に働くが、温度の場合、ΔH,ΔSが相殺的に働くため、中間状態を選択的に安定化することが困難であると考えられる。2状態転移を仮定し、熱、低温変性にともなう熱力学量算出を行った(研究成果1)。 3.これまでの研究から様々な蛋白質で、機能的に重要な高エネルギー構造を発見しており、既存の蛋白質構造の概念を超えた「新しい蛋白質構造パラダイム」の構築が必要という結論に至った(研究成果2)。
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