2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J04320
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
川上 良介 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 脳の非対称性 / シナプス / NMDA受容体 |
Research Abstract |
本研究は、脳の左右差はいつ、どのようにして形成され、維持されているのかを明らかにすることを目的としている。体軸の非対称性の研究は、これまで明確な左右差を持つ内臓系において、その形成機構が明らかにされてきた。しかしながら、脳における非対称性に関しては、実験動物のもつ制約のために、ほとんど明らかではない。我々は様々な実験手法を持つマウスにおいて海馬神経回路の構造的・機能的非対称性を明らかにした。そこで、この非対称性を指標としつつ、内臓に左右の逆位を示すivマウスを用いて電気生理学的手法による機能的解析を行った。Ivマウスは発生初期に発現する遺伝子に突然変異を持ち、その結果として内臓が正位にあるものと逆位にあるものが1対1で生まれてくることが明らかになっているマウスである。このivマウスの海馬神経回路について、電気生理学的手法を用いてそのシナプスにおけるNMDA受容体特性および可塑性の発達変化を解析した。その結果、ivマウスの海馬神経回路は、内臓の位置が正位であっても逆位であっても、通常のマウスで見出されたシナプス特性の左右非対称性が消失している結果が得られた。しかしながら、海馬の持つもう一つの非対称性である錘体細胞の上下の非対称性は維持されたままであった。次に、これら電気生理学的解析で得られた結果について、免疫電顕を用いた各個のシナプスにおけるNMDA受容体の分布を解析した。その結果、完全に電気生理学的手法で得られた結果を裏付けるものであった。本研究の結果からivマウスの海馬神経回路特性を通常のマウスと比較することで、ivマウスの海馬は左という特性が消失している可能性が示唆された。また、海馬の持つ非対称性の形成メカニズムは、内臓における左右軸の決定メカニズムによる非対称性形成機構とは異なることが示唆され、脳の左右差の形成について非常にインパクトのある研究だと言える。現在、本研究をまとめた論文を執筆中であり、早々に投稿する予定である。
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