2005 Fiscal Year Annual Research Report
実地観測による森林キャノピー下部の乱流特性と輸送現象に関する研究
Project/Area Number |
05J04346
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
中村 麗奈 独立行政法人森林総合研究所, 気象環境研究領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 夜間安定成層 / 乱流 / 重力流 / 樹林 / タワー観測 / アメリカ |
Research Abstract |
当初、富士吉田観測地での観測予定をしていたが、予備的な調査を行った結果、溶岩の影響により、林床の起伏が激しく、想定したよりも水平方向不均一な状態であることが分かった。林床付近における風速、温位観測の代表性が不明確になり、解析結果に多くの不確定要素を含むことが予想された。その為、本研究の方法論を見直し、今年度は、北米オレゴン州中部のポンデローザマツ(平均高度15m)における2004年度のタワー観測データの解析を中心に本研究課題を遂行した。 以下には、オレゴン観測地における夜間の温度成層や乱流特性について得られた知見をまとめる。この樹幹下部における安定成層場は大きく分けて、2つのモードがあることが分かった。このモードとは、観測地付近の林床の放射冷却によって発達する安定成層場(モード1)と、観測地の北西へ上昇する4、5度のスロープで発生した重力流が観測点に流入して生成される安定成層場(モード2)である。モード2は、樹幹上で観測された風速が小さく、正味放射が大きい状態(放射リチャードソン数が大)で発達する傾向がある。モード2は樹幹上に大きな鉛直温位勾配を伴うため、モード1に比べ、樹幹上と樹幹下の流れの場の分離を大きくする一方、重力流の流入に伴う林床との摩擦効果で、林床付近に乱流が発生し、林床付近の鉛直方向のスカラー量の混合を促す。樹幹上の風速の増加によって樹幹付近の安定度の減少は見られるものの、樹幹の運動量のダンピング効果が大きく、その影響は林床付近まで及ばない。つまり、早朝の日射以外に消散メカニズムがない為、重力流が一度発達すると、長い時間、モード2の流れが存続し、樹幹上下の流れの場の相互作用を支配する。以上の安定成層場のモードによって、特に樹幹付近、下部の安定度に、従って、乱流間欠度や乱流スペクトルに系統的な違いがでてくることも分かった。
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Research Products
(2 results)