2007 Fiscal Year Annual Research Report
モジュール動能による低木類の生育状態評価-多種共存に配慮した里山管理計画の立案
Project/Area Number |
05J04357
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
河村 耕史 Forestry and Forest Products Research Institute, 関西支所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 自家和合性 / コバノミツバツツジ / 樹冠形成 / 光環境 / 形態可塑性 / 花粉管 / 低木 / モジュール |
Research Abstract |
里山と呼ばれる都市近郊林の保全に向けた基礎的な研究が社会、行政から求められている。本研究は、里山を代表する花木であるツツジ類の、繁殖生態と成長様式を明らかにすることを目的とした。 繁殖生態)都市近郊のコナラ二次林の林道700mに生育するコバノミツバツツジを対象に、花粉管伸長の観察と受粉実験から、自家和合性の個体間変異について調査した。林道沿いで30個体を選び、花芽を袋掛けし、自家/他家花粉を付ける受粉実験を行った。受粉後、3、7、14、21日後に柱頭をサンプルし、染色した後、蛍光顕微鏡で花粉管を観察した。その結果、前年の受粉実験から自家和合性が高いと判定された個体でも、自家和合性が低いと判定された個体でも同様に、自家花粉の花粉管が胚珠付近まで伸長していることが確認された。したがって、自家和合性の程度に見られた個体間変異は、自家花粉の花粉管伸長を阻害する何らかの生理的な自家不和合性のシステムが存在するかどうかの違いによるものでなく、受精後の近交弱勢の大きさが個体ごとに異なるためであると推察された。 成長様式)里山林に生育するウスノキとシャシャンボを対象に、林冠の閉鎖状況に対するモジュールの生育状態の変化を解析した。ウスノキは複数の地上幹からなる複幹構造を持ち、シャシャンボは単数の地上幹による単幹構造を持つ。ウスノキの場合、地上幹の成長速度は林冠の閉鎖状況と無相関であったが、新しい地上幹を発生させる頻度が明るい環境ほど増加していることが統計的な解析によって示された。一方、シャシャンボでは、地上幹の成長速度が明るい環境ほど増加した。また、シャシャンボの場合、林冠木が常緑種か落葉種かという種構成の違いによっても、成長速度や葉の回転速度が変化していることが示された。これらの結果から、複幹か単幹構造かという生育型の違いによって、光環境に対するモジュールの反応様式が異なることが明らかにされた。
|