2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J04426
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
中川 加奈子 関西学院大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 地域文化 / コミュニティ / 社会変動 / 階層社会 / 民俗芸能 / ネパール / ネワール / 江州音頭 |
Research Abstract |
近年、グローバリゼーションに伴い社会の画一化が進行する中で、地域間の差異化を図ろうとする動きも並行して進んでいる。本研究ではこうした相反する現象が同時に進行する中で、人々はどのようにアイデンティティを構築し、いかなる主体として社会に働きかけることができるのか、地域文化の伝承という見地から社会学的に提示することを目的とする。 本年度は、民俗芸能・江州音頭を事例に近年の地域文化の担い手の多様性に着目し、まつりを抽象的なコミュニティとして捉え、まつりを介してマクロな権力構造と多様な主体との相互作用の過程を分析することで、一枚岩ではない重層的な主体像を明らかにした。その成果を論文にまとめ、現在投稿中である。 さらに今日のグローバリゼーションの動向をつかむ視点を大きく展開するために、アジア等の第三地域において、異なった権力的介入の形態と主体との相互作用の比較検討を開始した。そのために、平成17年8月より、ネパールの、カトマンズ盆地都市部に居住するネワールの低所得者層のコミュニティを主な対象地として、フィールドワークに従事している。参与観察を続ける中で見られた人々による伝統的な職業および民俗芸能の復興運動、中でもその過程におけるコミュニティ間の連携のあり方についての研究成果の一部を、Center of Nepal and Asian Studies主催のセミナー"Towards a Sociology for Happiness"において発表した。 カースト制度を抱えるネワール社会では、コミュニティ間、およびコミュニティ内に制度化された階層構造があり、その在り方が急激な近代化にともなって変容を遂げつつある。地域文化、中でも民俗芸能の伝承の背景には、こうした階層構造が大きく機能していることが予想される。現在フィールドワークの中で蓄積しているエスノグラフィーと、こうした社会構造を照らし合わせつつ、今後現代コミュニティの重層性、およびその可能性を解明していきたい。
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