2007 Fiscal Year Annual Research Report
中世ヒンドゥー教における日常儀礼の研究・ヴェーダからタントラへ
Project/Area Number |
05J04481
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井田 克征 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヒンドゥー教 / タントリズム / インド学 / 儀礼 / 女神信仰 / 南アジア / バクティ |
Research Abstract |
本研究は、南アジア地域において中世以降隆盛を極めたタントリズムの儀礼を対象とし、それが先行する宗教的伝統-具体的にいえばバラモン階層を中心としたヴェーダの宗教と、それ以外の社会階層において展開されたローカルな宗教-の影響を受けつつ、いかに展開していったかという問題を扱うものである。その一連の研究の最終年度として,本年度では以下のような研究を行った。 ・古来より宗教的職能集団としてヴェーダ祭式を執り行い,また中世以降においてヒンドゥー教が発展する際には中核的役割を担ったバラモン階級に焦点を絞って,当時の社会の中で彼らがどのような立ち位置にあったのかということを調査した。具体的には,酒や肉などといった「穢れた」要素が,宗教的な文脈の中でどのように取り扱われているのかという問題を考察した。結果として,ヴェーダ期からタントラ期へと展開する中で,彼らバラモン階級は一方では酒を忌避し,また同時にその酒というものに特別な意味を与えて儀礼の中で多用するようにもなっていった,その様子が明かになった。この研究の一部分は,論文"Drinking Goddess, Non-drinking Brahmin"としてまとめられた。 ・三年間に渡る本研究の現時点でのまとめとして,バクティという概念がタントリズムの中で果たした役割についての考察を執り行った。ヴェーダ的な儀礼主義の中核概念を引き継ぎながら独自の儀礼体系を展開させたタントリズムにおいて,人格的な姿を持った特定の神への帰依,信愛(bhakti)という概念は必ずしも必要なものとは言えなかった.それゆえにこのバクティの概念を換骨奪胎し,自らのシステムの中に組み込んでいくことでヴェーダ以来の儀礼主義と,冬至の宗教的潮流の一つの流行であったバクティの概念との間に折り合いをつけたのがこの時期(12世紀以降)のタントラ側の戦略であったというのがこの研究の結論である。この成果は「"ヒンドゥータントリズムにおけるバクティについて」として公刊された。
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Research Products
(3 results)