2007 Fiscal Year Annual Research Report
文化の生成・変容メカニズムについての社会ネットワークモデルの構築と実証
Project/Area Number |
05J04494
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
針原 素子 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文化 / 自己卑下 / 自己呈示 / 社会ネットワーク / シミュレーション / 面接調査 / 国際情報交換 / 韓国 |
Research Abstract |
本研究は、文化による様々な心理的傾向や行動の違いについて、社会ネットワークを基盤にした体系的理論を構築し、実証することを目的としている。その1つとして、日本人に見られる自己卑下的自己呈示について、社会的交換関係において自らの資源の交換価値を相手に低く呈示する行為として定式化し直し、新たに構築した理論モデルを自由回答による質問紙調査とシミュレーションによって検証した。その結果、相手に自分の実際の価値が分かっているときには自己卑下呈示をした方がその後の社会的交換を望まれること、そして、人々が近隣集団内部で多くの交換を行う社会では、既知の関係が多くなるため、自己卑下呈示方略が適応的であることを示した。これらの結果は、国内の2つの学会において発表し、博士論文の一部として東京大学大学院人文社会系研究科に提出した(最終審査済み)。また、昨年度に行った宮城県における郵送調査の結果、自己卑下呈示という行動だけではなく、平等分配志向、外的環境に自分を合わせる2次的コントロール傾向、失敗を避けるよう動機づけられる予防焦点傾向、他者との相互協調重視傾向など、従来、アジア人の特徴として指摘されてきた様々な心理的傾向がネットワークの閉鎖性・固定性に影響されていることが分かり、これらを包括的に説明する理論モデルの構築を行った。これらの結果は、20年度の国内学会で発表予定である。さらに、1つには、これらのモデルが、国を超えた文化差の説明にも有効であるかどうかを検証するため、もう1つには、人々が形成するネットワーク構造がなぜ社会によって異なるのかについてモデル構築を行うため、昨年度に行った宮城県調査に、新たに一般的信頼や見知らぬ他者とのネットワーク形成傾向などを質問項目に加え、韓国晋州市において面接調査を行った(計画サンプル750人)。本調査の結果は、20年度の国際学会において発表予定である。
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Research Products
(2 results)