2006 Fiscal Year Annual Research Report
先秦から秦漢時代における「中国」地域観念の形成に関する研究
Project/Area Number |
05J04498
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 英幸 東北大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 夏 / 中国 / 華夷思想 |
Research Abstract |
平成18年度の研究実績は以下の通りである。 研究発表としては、平成18年11月30日、「戦国秦の臣邦支配と「夏」の構築」と題した論文を『東洋史研究』誌に投稿した。本論文は平成17年に口頭で発表した内容に加筆したものであり、先秦から秦漢時代に至る「中華」観念の形成史上においてきわめて重要な位置を占める、雲夢睡虎地秦簡「法律答問」中に見える「夏」・「夏子」なる語句を分折し、これを従来考えられていた「秦化」を示す概念ではなく、秦の支配体制上における非「秦」人の統合を説明づける概念として位置づけなおした論考である。本論文はその後、東洋史研究会による審査を経て、編集委員会より要望のあった修正点を踏まえ、さらに論点を明確化し、平成19年4月に「秦律における夏と臣邦」と改題して、再投稿した(現在、審査中)。 なお、本稿の執筆過程で問題となった、先秦時代の「夏」観念と法律文書に見える「夏」概念の関連性については、文献史料や青銅器銘文等のほかの史料に対する検討結果を踏まえ、現在も研究を継続中であり、その概要については平成19年5月26日の東北中国学会にて新たに報告を行う予定である。 また、平成18年12月17日から平成19年2月11日まで、おもに中国武漢大学簡帛研究中心を訪問し、資料収集を行うとともに、現地の研究者と学術交流を行い、湖南省文物考古研究所では里耶秦牘をはじめとする新出資料を実見することができた。簡帛研究中心では平成19年1月25日に「"夏"与"臣邦"--秦律中的"中華"観念--」(中国語)と題する講演を行い、貴重な意見交換を行なった。これは平成18年11月に投稿した日本語の論文を要約し、さらに先秦時代の「夏」観念に関する初歩的な分析の結果を加えた内容である。現在、もとになった日本語の論文が審査中であるため、その掲載が決定した後に、中国語の原稿をあらためて公表する予定である。
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