2007 Fiscal Year Annual Research Report
コメニウスにおける世界の表象と教育的提示に関する思想史的研究-図絵・修辞・身体-
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05J04505
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北詰 裕子 Tohoku University, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | コメニウス / 教育学(教育思想史) / 一七世紀 / 事物認識 / 言語 / 光と闇 / 表象 / 知性 |
Research Abstract |
3年間の研究計画のうちの最後の一年として、それまでの研究成果を雑誌論文として学会誌に発表すると同時に、国際学会にて、今までの研究成果の一部を発表し、論文として投稿した。まず第一に、国内の学会誌に掲載された論文について。「透明な言語・不透明な知性-コメニウス『光の道』における光のメタファー」(『教育哲学研究』教育哲学会編、第96号、2007年11月、pp.22-41.)では、コメニウスによる「光Lux」の捉え方を中心に、事物認識の成立過程を考察した。コメニウスは、光学的な説明を、人間の内的な事物認識の過程にメタフォリカルに応用する。すなわち、人間にとっての「光」とは事物の認識であり、その光は、透明な言語と感覚をとおして不透明な人間の知性に行き着くことで成立し、さらに不透明な知性が光をあたりに撒き散らすこと(認識を他者へ送り返していくこと、すなわち、他者との会話や議論、出版活動等)によって、教育関係が成り立つ、という図式である。「光」の拡大と伝播の過程を、物理的世界、人間の内的世界、そして、人類史(歴史)において同型的に論じ、世界を学校として捉えるコメニウスの教育論の背景には、新プラトン主義的な発想や、百科全書的理想、そして、古典主義的な類似の発想が色濃く残存していた。以上を明らかにすることによって本論は、従来特に、言語教育と事物主義とを軸に「近代教育学の祖」として国内外で高く評価されてきたコメニウスの教育思想の認識論的背景を思想視的に読み直すものであった。第二に、国際学会における発表について。2007年11月15日〜17日、チェコ共和国プラハのカレル大学とホテルピュラミダにて、国際コメニウス学会が開催された。16日の個人発表会場にて、今までの研究成果の一部を発表した(J.A.Comenius and the Universal Language Schemes in 17th Century)。この発表内容を加筆修正した論文は、2008年内にプラハのアカデミア出版から刊行される予定の大会記念論文集(Academia,Prague,2008(刊行予定))に掲載が決定している。なお、国際学会の前後に、クレメンティヌムと国立博物館の図書館にて、資料収集を行った。その他、国内においても、教育思想史学会、教育哲学会等の学会に参加し、研究活動を行ってきた。
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Research Products
(2 results)