2006 Fiscal Year Annual Research Report
コメニウスにおける世界の表象と教育的提示に関する思想史的研究-図絵・修辞・身体-
Project/Area Number |
05J04505
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北詰 裕子 東北大学, 大学院教育学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | コメニウス / 教育学(教育思想史) / 一七世紀 / 世界 / 表象 / エンブレム / 学校演劇 / 声と身体 |
Research Abstract |
3年間の研究計画のうちの2年目として、それまでの研究成果を雑誌論文として学会誌に発表した。 「コメニウスにおける世界の表象と教育的提示-図絵・修辞・身体-」では、近代教育の祖として位置づけられてきたコメニウスの教育論を、17世紀的な言語論やリテラシーの問題、修辞学実践や学校演劇等の文脈と関連付けて再読することで、コメニウスの学校観と教育観、そしてそれを支える世界観を明らかにした。第一に、近代的な教授方法として評価されてきた彼の教育構想が、教育実践としていかに練り上げられたのか。その一例として『遊戯学校』という学校演劇脚本に着目することで、「声」と「身体」を重視する教育のあり方が、当時の民衆演劇や、ルネサンス以降のレトリック教育の流れと強く結びついていたことを明らかにした。第二に、近代教育史上における視覚的な学習教材として名高い『世界図絵』と、当時の寓意画集(エンブレム・ブック)との近似に着目することで、「文字」と「図絵」をからなる教科書成立の背景にある中世以降のアレゴリー的な世界観と特異に17世紀的な世界観との混交を示した。それらをふまえて第三に、近代教育の側から一方的に位置づけられてきたコメニウスの教育観・学校観・世界観の関係を、17世紀的な文脈の中で問い直した。この論文は、本課題研究の大きな枠組みとなるものであったといえる。 また、共著『教育史』では、コメニウスの教育思想を当時の社会改革論と宗教観との関わりから論じた。 『教育哲学研究』には、コメニウス著『地上の迷宮と心の楽園』(藤田輝夫訳、東信堂、2006)の図書紹介として、ユートピア文学との関係や他の教育的著作との関連等を中心に論じた。 本年度の研究発表としては、教育史学会において「比較<教育メディア史)の可能性 日本近世の書籍流通を中心にして」というコロキウムの中で、日本近世における書籍流通と比較させるかたちで、おもにグーテンベルク以降の西欧近代における書籍流通状況を交えながら、コメニウスの『世界図絵』の出版と流布について発表した。 その他、教育学会、教育思想史学会、教育哲学会等の学会に参加し、研究活動を行ってきた。また、前年度に引きつづき、所属機関である東北大学において、コメニウスのラテン語著作の研究会、そして「教育と主体」の研究会を継続して行うとともに、本課題研究遂行に必要な資料収集や文献読解を行ってきた。
|
Research Products
(3 results)