2005 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカの「表現の自由」論におけるリベラリズムとフェミニズムの対抗関係
Project/Area Number |
05J04512
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田代 亜紀 東北大学, 大学院・研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 表現の自由 / 揺らぎ / 報道の自由 / 放送 / ポルノグラフィ / フェミニズム |
Research Abstract |
研究の第一段階として、「表現の自由」が揺らぐ場面を、日本とアメリカの双方の場で検討した。日本においては、「NHK生活ほっとモーニング」訂正事件最高裁判所判決を素材とした。この判例は、テレビ番組の放送によって、私人の名誉毀損・プライヴァシーがなされた事案であり、この判決を基に、公共情報を発するという意味で重要性・自律性が認められる(べき)報道機関の報道の自由・表現の自由と、私人の名誉権・プライヴァシー権との関係を、「表現の自由」論としては如何に考えるべきかを検討し、その成果を判例評釈として公表した。判例に対する私見として、放送法の議論では、報道機関の自律性、表現の自由の保護から、報道機関に訂正放送を命ずることはできないが、民法723条で、訂正放送を含む私人の救済を考えるべきではないか、と結論を出した。この判例を通し、一方にある表現の自由、報道の自由の重要性と、他方である報道被害という現代社会の問題のはざまで揺らぐ「表現の自由」論を考察した。この研究の延長線上に、情報社会における「表現の自由」のあり方という問題があり、それは今後の課題である。 アメリカにおいては、ポルノグラフィの問題を素材とし、フェミニストの間で異なるポルノグラフィへの対応を検討した上で、そうしたフェミニストの議論を「表現の自由」論に取り入れるとき、フェミニストの諸議論の差異を如何に考えるかということを検討し、論文として公表した。そこでは、特徴ある二つのフェミニストの議論を取り出し、検討した。一つ目の議論は、女性の被差別的状況に焦点を当てる議論であり、こうした議論は普遍性を志向する憲法解釈においては、理論上受け容れにくいが、現実を救済する意味では有効な議論であり、翻って、もう一つの議論である、両性共通の権利概念を用いたフェミニストのアプローチは、憲法解釈に理論上取り入れやすい反面、女性の現実救済からは遠ざかる、という理論考察をした。この研究の延長線上に、憲法解釈がフェミニズムの視点とどのように向き合うか、という問題があり、それは課題として次年度以降も研究対象とする。
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Research Products
(1 results)