2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J04519
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
京極 俊明 Tohoku University, 大学院・国際文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 西洋史 / 民族問題 / オーストリア・ハンガリー / チェコ / 教育史 |
Research Abstract |
平成19年度には、拙稿「多民族帝国における多重言語能力の育成-モラヴィアにおける民族言語の相互習得をめぐる論争より-」が掲載された論文集、「帝国と学校」が昭和堂より発行された。本論文集はヨーロッパから日本・アジアの帝国を網羅した優れた論文集である。この仕事に参加したことによって、日本・ヨーロッパ諸国の植民地政策とハプスブルク帝国の教育政策の差異が改めて浮き彫りにされ、大いに刺激を受けた。また扱う地域は違えども、総じて少数派、被支配側の人々の活動にも焦点を当て、その内発的な運動を重視する点において、皆一致していた点は大変興味深く、今後の研究の方向性を考える上で、大いに学ぶところがあった。 また、4月にはハプスブルク史研究会で報告「モラヴィアにおけるチェコ系知識人層の形成とその活動」をおこなった。教育における言語・民族問題を考える上で、教育政策を動かすアクターとして、知識人層の分析は欠かすことができない課題である。本報告では先にあげたように、モラヴィアでは少数派にあたるチェコ系住民の知識人の活動に焦点を当てることによって、民族問題への認識を深めることを意図したものである。ここでは多くの青少年が、チェコ民族的なギムナジウム教員の影響を受けて、民族意識をはぐくみ、ウィーンではなく、チェコ文化の中心地プラハの大学に進学するようになったことを示した。この人の流れの変化が、モラヴィアにおける知識人層のメンタリティを変え、より民族主義的な活動が展開される要因となったのである。この報告により、今後は中等教育、エリート教育の分野にも視野を広げて研究を行う必要があることを再認識した。
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Research Products
(2 results)