Research Abstract |
今年度はハンガリー語とフィンランド語の副詞格(様格,因格,転格)の用法に加えて,比較構文や類似構文のような副詞的構文をも研究範囲に含め,調査と対照研究を行った.言語類型論をベースとした対照研究について,さらなる普遍性や認知的特性を探求すべく,エストニア語やハンティ語のようなフィン=ウゴル語,スウェーデン語やドイツ語などの印欧語,そしてパプアニューギニアやオーストラリアの言語について,上記の副詞格や副詞構文の構造を調査した. 1,5月にフィンランド及びハンガリーにおいて,現地調査を行った.さらにそこで,フィンランドと隣接するエストニア語とスウェーデン語,ハンガリーと隣接するドイツ語とスロバキア語(チェコ語)の言語データの収集を行った.これに関連して,同時期にフィンランドでは「統語的凍結に関する学会」で発表し,ハンガリーでは「国際形態論会議」で発表を行った. 2,副詞格のみならず,自然言語に現れる格に関する言語類型論的研究を行った.これは「言語構造のワールドアトラス」(World Atlas of Language Structures)という資料を使用し,世界中の言語で格を10個以上有する言語が,具体的にどのような格を有しているかを調査した.格を10個以上持つ言語には,フィン=ウゴル語では,フィンランド語,ハンガリー語,モルドビン語とウドムルト語が該当する.他,アメリカ大陸やオーストラリア大陸の格が豊富な言語を調査し,言語類型論の手法をもって対照した.これについては,マックスランク進化人類学研究所(ドイツ),ウプサラ大学(スウェーデン),そして日本では第132回言語学会にて発表し,最終的にNose(2006)にまとめた.
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