Research Abstract |
今年度はハンガリー語とフィンランド語の様格(essive)及び因格(causal/causative)の用法に関して,文献から実際の使用例を抽出して対照,調査した.言語類型論をベースとした対照研究のアプローチをとり,格の形式と意味の関係を図式化する意味図(Semantic map)を作成することを目的とした. 1,様格について両言語の用法を対照した結果,様態や役割の基本的な用法での共通点は存在するが,その他の点で大きく異なることが判明した.ハンガリー語の様格には比喩的用法,談話を構成する副詞の機能などがあり,フィンランド語には,形容詞と共に現れる状態や時間表現の用法が多く観察された.さらに,語順上の様格の出現位置に関しても,ハンガリー語では動詞の直前に現れるのに対し,フィンランド語では動詞の後ろか文頭に現れることが判明した.様格の用法上の違いと様格が語順に現れる位置,さらに頻度情報を組み合わせた意味図を作成した.この成果については,韓国ソウルで開催された国際認知言語学会にて口頭発表を行った.加えて,ハンガリー語の様態表現の中で,接続詞mintを使用した構文について基本的な調査を行った. 2,因格については,両言語の用法をパラレルテクストで対照した.ハンガリー語には因格が存在するが,フィンランド語には存在せず,その代わりに原因を表す後置詞を使用する.因格及び原因や理由,目的の意味を表す形式について,その意味分布図を作成した.その結果,ハンガリー語で因格が使われる際,フィンランド語では後置詞に加え,変格(translative)や出格(elative)が使われることが判明した.この成果については,ハンガリーとフィンランドのそれぞれの国で開かれた学会(ハンガリーではウラル語のワークショップ,フィンランドでは言語への認知的研究の学会)にて口頭発表を行った.
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