Research Abstract |
本研究の目的は,地域の再生可能エネルギー資源とエネルギー需要の量的均衡およびマーケット特性を考慮して,コスト最小となる再生可能エネルギーシステムを構築することにある。今年度は,特にバイオマスエネルギーシステムの設計に焦点を当て,バイオマスならではの地域・利用技術特性を考慮して,導入に伴うエネルギーシステムコストや環境影響の変化を明らかにした。特に木質系バイオマスに関する研究では,原料として林地残材を,エネルギー変換技術として規模の効果を組み込んだ直接燃焼発電とガス化発電を考慮に加えた。燃料価格を補助金によって低減することを想定した解析の結果,エネルギーシステムコストは,補助金を含めても,直接燃焼発電では燃料価格670円/GJ以下にて,ガス化発電では270円/GJ以下のとき,従来に比べて低減されることがわかった。CO2は,最も導入された場合に従来比約10%削減された。 畜産系バイオマスを対象とした研究としては,乳牛排せつ物の処理コストを最小化するメタン発酵プラントの最適配置を解析した。岩手県葛巻町を対象とした解析の結果,(1)各集落にて個別にプラントを設置する場合よりも,集中型プラントを設置したほうが総コストは安価となること,(2)系統電力購入費用の減少分を考慮すれば,プラント総コストは,堆肥化による従来の処理コストに比べて低減されること,(3)建設費への補助割合を0%,25%,50%と変化させた場合に,プラント総コストの最小値を与えるプラント容量は,約50〜100kWeずつ小さくなることがわかった。 資源の生産,収集,変換,消費に至る一連のシステムの導入に伴う経済・雇用効果を解析した。発電に伴う経済効果は,間伐材を燃料とする直接燃焼発電が最も大きく,液体燃料の生産に伴う経済効果は,ナタネから液体燃料生産が最も大きい。雇用効果は,間伐材からのメタノール生産が最も大きい。
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