2006 Fiscal Year Annual Research Report
都市水循環システムにおける病原微生物によるヒトへの健康リスクの評価
Project/Area Number |
05J04617
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
真砂 佳史 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際研究者交流 / アメリカ合衆国 / クリプトスポリジウム / 水系感染症 / リスク評価 |
Research Abstract |
本年度は、実際に発生した感染症集団発生事件を例にとり、小規模な水循環システムの外部からの病原微生物の混入に対するシステムの脆弱性を、感染症リスクの変動を指標として評価した。 2005年8月、ニューヨーク州セネカ湖州立公園(Seneca Lake State Park)において、4000人以上の感染者を出す大規模なクリプトスポリジウム症の集団感染事例が発生した。当該施設には子供が水と触れ合える噴水広場があり、この噴水の水が汚染源であることが考えられた(実際に、噴水広場の水からクリプトスポリジウムオーシストが検出された)。使用されていた水はプール水に対する水質基準(遊離塩素濃度1.5mg/L以上)を満たしており、また水の循環利用のための処理装置もアメリカ国内の噴水公園で一般に見られる方式であった。しかし、クリプトスポリジウムは塩素に対する耐性が非常に高いことと、水処理に使われていた濾材がクリプトスポリジウムのオーシストを除去するには不適切であったことにより、今回のような大規模な感染症集団発生が発生したと考えられる。 噴水広場内の水循環システムにおいて、感染者の糞便による汚染があったと仮定し、水中のクリプトスポリジウムオーシストの濃度推移を推定するモデルを作成した。また、得られたモデルを元に、噴水広場の訪問者がクリプトスポリジウム症に感染する確率を推定した。その結果、ごく少量の糞便による汚染により、今回のような大規模な感染症集団発生が起こりうることがわかった。また、一度汚染されると、数日間は感染リスクの高い状態が続くことも示された。したがって、この水循環システムは外部からの汚染の混入に対し非常に脆弱であることが明らかとなった。この知見は、バイオテロリズムへの対策を講じる上で非常に重要である。
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Research Products
(3 results)