2005 Fiscal Year Annual Research Report
一元論的自然主義と多元論的自然主義の現代的意義と可能性についての検討
Project/Area Number |
05J04636
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Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
井頭 昌彦 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 自然主義 / 一元論 / 多元論 / 物理主義 |
Research Abstract |
自然主義と呼ばれる立場のうちで物理主義的一元論の立場をとるクワインの議論を検討した。その結果、クワインの物理主義は、「現象を包括的かつ単純な仕方で扱う学問」として物理学を捉え、その物理学に「事実判断の最終的審判者」という身分を与えるものであることを確認した。そして、この物理主義の立場と自然化された認識論との関係を考察し、「自然化された認識論の内部においてはこのような物理主義の立場を排他的な仕方で主張することはできない」という結論に至った(この考察の成果は「クワインの物理主義と自然化された認識論」『科学哲学38-2』にまとめられている)。 一方、多元論的自然主義の立場を検討するための準備として、「プラグマティズムに支えられた規約主義」と「寛容の原則」とを軸とすることで多元論的な方向性を持つカルナップ哲学の再検討の作業にも取り組んだ。分析哲学史における標準的見解は「カルナップ哲学はクワインの議論によって致命的な打撃を受けた」というものであるが、本研究の結果として、「このような評価は誤ったものであり、哲学的問題に取り組む際の両者の基本スタンスが根本的に異なっているためにクワインの批判は十分回避可能であるという結論に至った。 さらに、晩年におけるクワインの議論を再構成することによって「クワインの自然主義が物理主義的一元論と多元論の両方の方向性を許容しうるものである」ということを見い出すにいたった。ここからさらに、物理主義的一元論、自然科学主義的自然主義、多元主義といった自然主義の様々なヴァリアントの関係を統一的な構図の中で位置付ける、という作業を現在遂行中である。
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Research Products
(1 results)