2005 Fiscal Year Annual Research Report
生活環境中の化学物質が胎児脳と出生後の発達に及ぼす影響について
Project/Area Number |
05J04659
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 恵太 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | コホート / NBAS / 魚摂取 / メチル水銀 / PCB / 発達 / 周産期曝露 |
Research Abstract |
本研究は、環境由来化学物質の周産期曝露による児の発達、特に心理、行動、認知面における発達に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした前向きコホート研究である。 環境中のPCB、ダイオキシン、メチル水銀などの化学物質が母胎を介して胎児脳に作用し、出生後の発達に影響を及ぼすことが懸念されている。これら化学物質は主に食事(魚介類)の摂取を通して人体に摂取・蓄積されている。しかしながら、魚介類には不飽和脂肪酸(PUFA)などの脳の発達に効果があるとされる栄養素も多く含まれている。ここから、化学物質曝露の発達への影響を論ずる上では、化学物質のリスク、魚介類摂取のベネフィットを総合的に考慮した検討が必要である。 本年度は、生後3日目に実施された新生児期の神経行動学的検査であるブラゼルトン新生児行動評価(NBAS)の結果について、母親の毛髪から測定された毛髪総水銀(胎児期メチル水銀曝露を反映)および食事調査(FFQ)から得られた魚摂取量との関連について検討した。種々の交絡要因を調整するために重回帰分析を用いた。その結果、NBAS運動クラスターと毛髪総水銀との間に有意な負の関連が認められた。これはメチル水銀が新生児の神経行動学的側面へ影響を及ぼすことを示唆しているものと考えられる。一方、総魚摂取量と同じ運動クラスターとの間には有意な正の関連が認められた。これは魚摂取の持つ栄養学的な効果を表すものと思われる。魚摂取の栄養学的利点とはPUFAなどの栄養素を指すと考えられる。そこでPUFAを多く含む代表的な魚である青魚を指標に取ると、青魚摂取量と運動クラスターおよび状態の幅クラスターとの間にそれぞれ有意な正の関連が認められた。これらの結果は、魚摂取の持つ2つの側面-化学物質曝露のリスクと栄養学的なベネフィット-を示すものと考えられた。
|
Research Products
(1 results)