Research Abstract |
第3世代通信システムでは,Rake受信器というチャネル整合フィルタを用いる直接拡散符号分割多重(DS-CDMA)が採用されているが,大きなパス間干渉(IPI)により伝送特性が大幅に劣化してしまう.最近,100Mbps以上の次世代移動通信システムの候補として,多数の狭帯域サブキャリアを用いて並列伝送するマルチキャリア(MC)-CDMAが有望視されている.しかし,これらのマルチキャリア伝送では送信信号のピーク対平均信号電力比(PAPR)が大きくなってしまう.そこで,私は従来のRake受信の代わりに周波数領域等化をDS-CDMAに適用する研究を行ってきた.最小平均二乗誤差(MMSE)規範に基づく周波数領域等化(FDE)を用いるDS-CDMAでは,PAPRの問題も少なく,かつMC-CDMAと同等の伝送特性が得られる.しかし,DS-CDMAでは,MMSE-FDE後にチップ間干渉(ICI)が残留してしまい,それが誤り率(BER)特性改善に限界を与えるという問題があった. そこで,私は,残留ICIを考慮したMMSE重みを理論的に導出し,それを用いるFDEと周波数領域ICIキャンセラを提案してきた.周波数領域ICIキャンセラでは,残留ICIレプリカの生成が必要である.提案法では,判定誤りによる誤り伝搬を軽減するために,対数尤度比(LLR)より求めた軟判定レプリカを用いている.周波数領域ICIキャンセラでは,まず,N_cポイント高速フーリエ変換(FFT)により得られたN_c個からなる受信信号の周波数成分にMMSE規範に基づくFDEおよびICIキャンセルを行う.次いで,N_cポイント逆FFT(IFFT)を適用して時間領域信号に変換し,逆拡散を行い,軟判定値系列を得る.これをフィードバックし,MMSE-FDE重みおよびICIレプリカを更新して,FDE, ICIキャンセルおよび逆拡散を行って,データ復調する.以上の周波数領域ICIキャンセラを用いれば,大幅にBER特性を改善でき,理論的下界に近い優れた特性が得られることを計算機シミュレーションにより示した.
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