Research Abstract |
多くのMEMSディバイスにおいて,その機能と性能は立体的構造と密接に関係する.したがって,3次元フォトリソグラフィは,マイクロマシニングにおけるディバイスの多様化と性能向上において極めて重要である.実際の工程では,段切れやピンホールを回避するため,レジストをむらなく均一に塗布することが必要である.しかし,従来のスピンコーティングでは,立体的なディバイス表面にレジストをむらなく均一に塗布することが困難であった.その中で,スプレイコーティングは,これを実現可能な3次元フォトリソグラフィ法として最も適していると考えられる.スプレイコーティングでは,レジストの膜厚と表面性状を制御する多くのパラメータがあるが,最も重要なパラメータは,サンプルの温度とレジストの噴射速度である.このうち,サンプルの温度は段切れに関係し,噴射速度はピンホール形成に関係する.成膜時の段切れやピンホール形成を回避し,ディバイスに応じた膜厚の制御をするためには,この2つのパラメータの相互関係を明らかにすることが鍵となる.本研究では,レジストの噴射速度に着目し,物理的モデルを構築しレジスト粒子の運動とディバイス表面へのレジストの塗布メカニズムを検討した.その結果,噴射速度を大きくすると,高アスペクト比を有するディバイスであっても,段差部での塗り残しが無く,さらにキャビティ底部でのピンホールも形成されないことが明らかとなった.本研究では,実際に段差200μmのキャビティに幅100μmのパターンを転写して検証したところ,段切れもピンホールもできないことを確認した.本研究の成果を受けて,より汎用性の高い3次元スプレイコーティング装置が商品化(ウシオ電機との共同開発)されている.本研究成果は,3次元フォトリソグラフィ技術の開発に寄与し,将来,より複雑で高機能・高性能を有する3次元MEMSディバイスの開発に大きく貢献するものと考えられる.
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