2005 Fiscal Year Annual Research Report
非対称化を鍵反応とした神経栄養因子活性物質の全合成と受容体タンパク質の同定
Project/Area Number |
05J04806
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 隆章 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | メリラクトンA / 神経栄養因子 / アルツハイマー病 / 神経変性疾患 / 8員環ジケトン / 分子内アルドール反応 / 非対称化 / 2,6-ビストリフルオロメチルベンジル基 |
Research Abstract |
メリラクトンA(1)は神経栄養因子と同様な活性を示し、アルツハイマー病など神経変性疾患の治療薬として期待されている。しかし、1の興味深い活性発現機構は不明であり、その解明には全合成による量的供給が不可欠である。私は、非対称化を鍵反応として1の不斉全合成を達成した。 私は、1の中に存在するビシクロ[3,3,0]オクタン構造に着目し、擬似的なメソ体である8員環ジケトン(2)の分子内アルドール反応を用いた非対称化による骨格形成を鍵反応として設計した。この反応では、位置選択的な脱プロトン化と続く分子内アルドール反応の2つを同時に制御する必要があった。2つのケトンのα位のうち、一方から位置選択的に脱プロトン化するため、8員環ジケトン(2)に存在する2つの一級水酸基を立体障害の大きさの異なる保護基で保護した。立体障害の小さな保護基としてはベンジル基を用いることにした。立体障害の大きな保護基としては、ベンジル基のオルト位にトリフルオロメチル基を有する2,6-ビストリフルオロメチルベンジル基を新規にデザインし、これを用いることにした。 8員環ジケトン(2)をNaN(TMS)_2で処理すると予想通り立体障害の小さなベンジル基側から選択的に脱プロトン化が進行し、続くジアステレオ選択的なアルドール反応を経て、望む環化体を収率75%で得ることができた。こうして、保護基を基質の活性部位の保護という目的に加え、反応の選択性を制御するデバイスとして用いる巧みな合成戦略で光学活性なビシクロ[3,3,0]オクタン骨格の構築に成功した。得られたアルドール環化体を既に開発済みのラセミ体全合成ルートへと適用し、不斉全合成を達成した。 こうして、私が開発した不斉合成ルートにより光学活性なメリラクトンA(1)の実践的な供給方法が確立され、1の興味深い活性発現機構解明への道が開けた。
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Research Products
(1 results)