Research Abstract |
三次元培養を用いた細胞チップの作製と電気化学的な細胞機能評価に関して検討を行った. 以下に項目ごとに概要を記す. 1. 癌細胞を対象に,チップ上に任意に配列した微小領域内(20〜300nL)で細胞を三次元的に培養可能な細胞チップを開発した.電気化学的手法により細胞の呼吸活性を評価した結果,薬剤の効果に起因する細胞活性を評価可能であった.三次元培養法としては,細胞の自己集合体である細胞塊を用いる手法,および細胞外マトリクスに包埋することで細胞塊を形成する手法を適用可能であった.このような異なる三次元培養法を用いて,細胞外環境に起因する細胞機能の変化を評価する事で,細胞の分化形質に起因する細胞機能発現を電気化学的に評価することに成功した.また,細胞活性の評価に加え,電気化学プローブ試薬を用い,細胞内のシグナル伝達をモニター可能であった.以上のように,微小なチップ上で,生態組織に類維した三次元培養細胞の薬剤効果に起因する細胞の活性,および細胞内のシグナル伝達を評価可能なデバイスの開発に成功した. 2. 胚性幹(ES)細胞を対象に,チップ上で三次元培養が可能なデバイスの開発を検討した.体外培養においては,使用可能な細胞種が限られており,多分化機能を有するES細胞の利用が切望されている.しかしながら,ES細胞の分化工程において,細胞の自己集合体である胚様体(EB)の形成が必要不可欠であり,その制御および操作の煩雑さが課題となっている.そこで,EB体の作製およびその制御が可能なデバイスを開発した.その結果,チップ上でEB体のサイズを任意に制御可能であり,更に選択的に神経細胞への分化誘導に成功した.この手法を用いることで,チップ上でEB体の作製を空間的に制御可能となり,個々のEB体を異なる細胞種に分化誘導することで,チップ上に各臓器に対応した細胞を配列できるデバイスの開発が期待できる.
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