Research Abstract |
本研究では哺乳動物の卵成熟に関わる分子を明らかにすることを目的とし,マウス卵成熟過程におけるAktの役割について以下のことを明らかにした。1)AktはGV期卵母細胞に存在し,PI3K/Akt経路が機能することで卵成熟が進行する。2)AktはMIおよびMII期の紡錘体に局在し,そのThr308リン酸型はPCMに,一方,Ser473リン酸型は紡錘体に存在し,受精後第2極体放出とともに極体側に移行し,前核形成期以降発現しない。3)Aktの局在は体細胞の分裂中期では観察されず,Aktは減数分裂特異的な機能を持つ。4)Aktは減数分裂再開において,卵核胞崩壊時の核膜の消失に関与する。また,減数分裂後期の紡錘体形成・維持,さらに受精後の第2極体放出に機能し,減数分裂の再開と完了に関与する。 一般に,体細胞ではAktは2つのリン酸化部位がリン酸化することにより活性型となり機能をもつことが知られている。しかしながら,本研究の結果から,卵母細胞ではAktが減数分裂特異的に紡錘体に局在し,2つのリン酸型Aktは異なる局在性を示すことが明らかとなり,リン酸型Aktはそれぞれが独立して機能している可能性が示唆された。そこで,片方のリン酸化部位のリン酸化を阻害することで他方のリン酸型Aktの機能を調べる方法を用い,卵成熟における2種類のリン酸型Aktの役割を調べた。その結果,5)2つのリン酸型Aktは,それぞれが独立して機能することが明らかになった。すなわち,Thr308リン酸型Aktは減数分裂中期紡錘体維持と受精後の第2極体放出から減数分裂の完了に関与し,一方,Ser473リン酸型Aktは減数分裂中期紡錘体維持と第2極体放出に機能する。 本研究で得られた知見は,マウスの卵成熟過程にPI3K/Aktが関与し,Aktが減数分裂の再開と完了に機能していることを明らかにした初めてのものである。さらに,Aktの2つのリン酸型Aktはそれぞれが独立して機能することを明らかにし,本研究で得られた成果は,マウスだけでなく,他の哺乳動物における卵成熟機構の解明に貢献するものである。
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