2008 Fiscal Year Annual Research Report
パーソンズの「制度的個人主義」から現代の個人主義を問いなおす
Project/Area Number |
05J04929
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西山 宝恵 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 理論社会学 / 学説史 / タルコット・パーソンズ |
Research Abstract |
70年代パーソンズの未公刊草稿の読解、パーソンズ=F・ブリコー往復書簡のうち手書き部分の読解、ブリコーの著作Le bricolage ideogiqueの読解である。これらの作業を通じ、パーソンズの「制度化された個人主義」概念にたいするブリコー独自の解釈を明らかにした。パーソンズの「制度化された個人主義」概念は60年代以降の社会情勢や認識枠組みの変化と密接に関連している。ブリコーの『制度化された個人主義』は、パーソンズ自身やパーソンズ研究者らによって高い評価をうけつつも、これまでその内容がきちんと取り上げられてこなかった。本研究は、ブリコーがこの著書を執筆中にパーソンズとやり取りした書簡を併せ読むことにより、彼独自の視点を取り出すことを試みた。それは、パーソンズ理論と法理論との接点への着眼である。ブリローによればパーソンズ理論(準拠枠やパラダイム)は演繹的ではなくほモンロー的な性質をもっている。ブリコーがこのような解釈に力点を置いた意図については、ブリコーの他の著作Le bricolage ideogiqueを読むことで明らかとなった。Le bricolage ideogique自体は、啓蒙期から70年代にいたるまでのフランス知識社会史がテーマである。しかし、あらためて『制度化された個人主義』とっきあわせて読んでみれば、5月革命を経た70年代以降の社会におけるパーソンズ理論の有効性を論証する内容となっている。すなわち、演繹的に理論を構築した啓蒙期「哲学者」たちの時代から、科学性とイデオロギー性のはざまで揺れ動いたマルクス主義と実存主義の時期をへて、いまや「コモンロー的」に構築される知的ブリコラージュが戦略的に有効である、という解釈が示されている。この知見の発表は次年度に行う。
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