2005 Fiscal Year Annual Research Report
超高分解能光電子分光装置の建設と高温超伝導体における電子・ホール対称性の研究
Project/Area Number |
05J04947
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
寺嶋 健成 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 角度分解光電子分光 |
Research Abstract |
酸化物高温超伝導体は超伝導を担う電子の電荷の符号により電子型、ホール型という2つの種類に分類される。高温超伝導機構の理解のためには電子型・ホール型両方の物質における超伝導相の電子状態を詳細に研究する必要が有るが、一般的に電子型はホール型に比べ1桁程度超伝導転移温度が小さいために超伝導状態特有の電子状態を観測することが困難であった。角度分解光電子分光は電子状態を波数にまで分解して直接観測できる強力な実験手法であり、光電子分光実験からホール型高温超伝導体における超伝導ギャップ対称性や擬ギャップの存在などの様々な報告がなされている。一方で、電子型高温超伝導体の超伝導ギャップ対称性を決定づける超伝導状態の詳細な波数依存性は明らかではなかった。この背景には、従来の光電子分光装置の測定時の真空度では試料の劣化が急峻で、十分な統計精度を持つ実験データを得ることが困難であるという問題点があった。劣化の主な原因は、装置の光源槽から来る残留不純ガスの試料表面への直撃である。この問題点を解決するため、研究室現有の装置を改良して装置に極端紫外フィルターを設計・設置した。その結果、試料の測定可能時間は約10倍ほどに増加した。改良した装置を用いて電子型高温超伝導体のフェルミ面上の複数の波数における超伝導ギャップの超高分解能角度分解光電子分光を行い、超伝導ギャップ対称性を決定した。その結果、反強磁性相関の強い波数において超伝導ギャップが最大となる振る舞いを見いだした。この実験事実は、反強磁性相互作用と高温超伝導との密接な関係を示している。また、ホール型高温超伝導体の超伝導ギャップも反強磁性相関の強い波数領域で最大となるため、ホール型・電子型の両方で超伝導ギャップの性質が同様の考えで理解できることも明らかとなった。
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Research Products
(4 results)