2005 Fiscal Year Annual Research Report
集束イオンビームを用いて作製した強磁性トンネル接合におけるスピン注入磁化反転
Project/Area Number |
05J04962
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 大輔 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 強磁性トンネル接合 / スピン注入磁化反転 / 集束イオンビーム / 電子線リソグラフィ |
Research Abstract |
本年度は,電流による磁化反転が可能な微小強磁性トンネル接合(MTJ)の作製プロセスを確立し,スピン注入磁化反転の本質的な特性を測定および見積もるため要素技術の確立を目的とした. 1.ナノメータサイズ強磁性トンネル接合の作製 集束イオンビームによって形成したタングステンの微小パターンをマスクとするプロセスを用いて最小140×250nm^2のMTJを作製し,140Ωμm^2の接合抵抗(RA)および17%のトンネル磁気抵抗(TMR)比を得た.また,加工プロセスに電子線リソグラフィを導入することによって,最小100×200nm^2のMTJを作製し,30%以上のTMR比を得た. 2.強磁性トンネル接合の低抵抗,高出力化 酸化マグネシウムの極薄膜を中間絶縁層とするMTJを作製し,6Ωμm^2のRAを得た.また,磁場中熱処理によって最大90%のTMR比を得た. 3.スピン注入磁化反転の観測 上記低抵抗MTJに面直方向にDC電流を印加し,接合にかかる電圧を4端子法により測定した.この際,印加電流によって抵抗が変化し,その変化率がTMR比と等価であることから,微小強磁性体の磁気モーメントが電流によって符号反転したことを確認した.このとき反転に要した電流密度は7.7×10^6A/cm^2であった.また,熱処理温度の上昇に伴って,反転電流密度も増加することが分かった. 4.パルス電流による測定 DC電流からの熱擾乱による反転確率の増加を抑制し,微小強磁性体の本質的な反転電流密度を見積もるために,パルス電流による測定系の構築を行った.パルス電圧発生器を用いて1ミリ秒から1秒の幅を持つパルス電流を接合に印加し,ロックインアンプによる4端子測定を行うことで抵抗の変化を読み取ることができた.また,磁気モーメントの初期角に起因した磁化反転の確率や分布の測定が可能であることを示した.
|