2006 Fiscal Year Annual Research Report
集束イオンビームを用いて作製した強磁性トンネル接合におけるスピン注入磁化反転
Project/Area Number |
05J04962
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 大輔 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 強磁性トンネル接合 / スピン注入磁化反転 / 電子線リソグラフィ / ダンピング定数 |
Research Abstract |
微小強磁性体におけるスピン偏極電流を利用した磁化反転現象を高機能スピンデバイスに応用する際、磁化反転に要する電流密度を低減することが求められている。本研究では、スピン注入磁化反転における反転電流密度の低減を狙い、スピントルクと競合する磁気緩和の観点から強磁性材料や素子構造の最適化に関する研究を行う。本年度は、以下の事項について研究を行い、各々に対する知見を得た。 1.微小素子の作製とスピン注入磁化反転の評価 電子線リソグラフィ、Arイオンミリング等を用いて最小100×200nm^2の面積を有する微小強磁性トンネル接合(MTJ)を90%以上の高効率で作製可能な加工プロセスを確立した。CoFeB/MgO/CoFeBを基本構造とするMTJにおいて、RA=7Ωμm^2の低抵抗領域で150%以上の高TMR比を得ることに成功した。パルス電流を用いた測定法により見積もった熱擾乱に依存しない反転電流密度(J_<CO>)は最小6.7×10^6A/cm^2であった。このJ_<CO>と熱揺らぎ耐性(E/K_BT)は磁化反転層の保磁力に伴い増加した。これは、熱処理によって結晶化したCoFeBの磁化分布に起因すると考えられるため、熱処理に対する磁気特性の制御が重要であることが分かる。 2.強磁性体における磁気緩和の評価 J_<CO>の低減には、スピン注入磁化反転機構と関係する磁気緩和を調べる必要があるため、強磁性共鳴(FMR)によって磁化反転層に用いる強磁性体のダンピング定数αを見積もった。複数の磁性層を有する交換結合型TMR多層膜において磁化反転層のみのFMRスペクトルを分離して評価できることを示し、CoFeB単層膜と同様に膜厚が薄くなるに従いαは増大することが分かった。磁化反転層が2nmの膜厚ではα=0.015であり、バルク値と比べて5倍大きくなった。αの膜厚依存性はスピンポンピングに起因すると考えられるため、スピンの拡散防止層として磁化反転層に薄い絶縁体を隣接すると、αの増大を抑制できることが分かった。
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