2007 Fiscal Year Annual Research Report
集束イオンビームを用いて作製した強磁性トンネル接合におけるスピン注入磁化反転
Project/Area Number |
05J04962
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 大輔 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 強磁性トンネル接合 / スピン注入磁化反転 / 磁気ランダムアクセスメモリ / 電子線リソグラフィ / ダンピング定数 |
Research Abstract |
強磁性トンネル接合におけるスピン注入磁化反転は不揮発性磁気メモリの高集積化に不可欠であり、応用上、磁化反転に要する電流密度を低減することが課題である。理論予測から反転電流が強磁性材料の飽和磁化やダンピング定数などの磁気パラメータに依存すると考えられており、反転電流を低減するためにはこれらの相関関係を検証することが重要となる。そこで本年度は、これまで強磁性トンネル接合(MTJ)の磁化反転層に用いてきたCo-Fe-B合金のB組成を増加することで飽和磁化を減少させた接合におけるスピン注入磁化反転特性の評価を試みた。Co-Fe-B合金の組成は(Co50Fe50)100_<-x>B_x(X=20,25,30)である。2.5nmのMgOを障壁層に用いたMTJを作製し、熱処理後にすべての組成において250%の高いTMR比が得られた。また、B量の増加に伴い熱処理によるTMR比の熱処理温度依存性に違いが見られるものの、TMR比の最大値は同程度であるためB添加による結晶構造や格子間隔への影響は小さいと考えられる。次に、MgOの膜厚を0.3-0.9nmとし、EBリソグラフィを用いて100nmサイズに加工したMTJにおけるスピン注入磁化反転を観測し、バイアス電流のパルス幅に依存しない反転電流密度J_<c0>を熱活性モデルによる解析を用いて導出した。その結果、B量を増やしたMTJにおいてJ_<c0>の値が減少した。また、TMR比から導出されるトンネルスピン分極率およびVSMやFMRを用いて見積もった飽和磁化やダンピング定数の値から理論的に予測される項を計算すると測定したJ_<c0>と概ね比例関係にあることが分かった。この結果により、反転電流低減のための素子設計の指針がより明確になり、今後のスピン注入現象を利用する様々なデバイスの開発に貢献することが期待できる。
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Research Products
(3 results)