2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体内吸収性セラミックスとチタン系材料を利用した生体機能再建デバイスの開発
Project/Area Number |
05J04972
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上田 恭介 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生体材料 / チタン / リン酸カルシウム / スパッタリング / 擬似体液 / 密着力 / 動物実験 / ブラスト処理基板 |
Research Abstract |
【研究目的および方法】これまでRFマグネトロンスパッタリング法により鏡面研磨チタン基板へのリン酸カルシウムコーティングを行ってきた。今年度は、実際にインプラント材料として用いられているブラスト処理チタン基板へのコーティングに着目し、特に基板とコーティング膜との密着力に及ぼす生成相、基板粗さ、擬似体液浸漬および熱処理の影響について検討した。また、動物実験として、ブラスト処理を施した人工歯根にリン酸カルシウム膜をコーティングし、それらをウサギの大腿骨に埋入した。人工歯根を取り出す際のトルクを測定することで、コーティング膜の骨適合性を評価した。 【研究成果】作製されたコーティング膜は基板の凹凸をよくカバーし、均一かつ密なものであることが分かった。室温において成膜した場合は、生成相として非晶質リン酸カルシウム(ACP)や結晶質相であるオキシアパタイト(OAp)が得られた。これらのコーティング膜を擬似体液(PBS(-))に浸漬すると、鏡面研磨基板にコーティングした場合と同様に、その表面に網目状のアパタイトが生成することが明らかとなった。また、基板温度を上昇させることでRutile、β-TCPおよびCaTi_4P_6O_<24>が得られた。 基板とコーティング膜の密着力は、室温成膜ままにおいては基板の粗さによらず60MPa以上であった。一方、ACPコーティングを擬似体液に浸漬させた場合、鏡面研磨チタン基板では顕著な密着力の低下が見られたが、ブラスト処理基板では見られなかった。このことから、基板へのブラスト処理は、擬似体液浸漬に対して密着性の高い膜を得るのに有効な手段であると考えられる。ブラスト処理基板にコーティングしたACPおよびOAp膜をシリカアンプル中にて873K、7.2ks熱処理することで、いずれも結晶化してOApとなったが、その密着力は低下した。しかし、同条件にて大気中で熱処理した場合は密着力の低下は見られなかった。 コーティング膜の動物埋入試験より、埋入2-4週においてはACPをコーティングしたもののほうが、コーティングを施さなかったものよりも引き抜きトルク値は高い値を示した。以上の結果から、リン酸カルシウムコーティングは、チタン系材料の骨適合性を向上させるための有効な手段の一つであることが分かった。
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Research Products
(8 results)