2006 Fiscal Year Annual Research Report
DNAデバイス創製におけるバイオ・ナノ流動ダイナミクス
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05J04986
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丸山 洋平 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | DNA / フント則 / ビリアル定理 / メチレン分子 |
Research Abstract |
本年度はDNAナノデバイス創製のための基礎研究として,磁性の起源であるフントスピン多重度則の成立要因を研究した.フントのスピン多重度則は「同一電子配置から生じる多重項の中で,スピン最多重度状態が最安定エネルギーを示す」という経験則である.原子・イオン・分子の基底および低励起状態について幅広く当てはまる.多くの教科書は「スピン最多重度状態と多重度のより少ない状態では,原子核電子間引力エネルギーV_<en>および運動エネルギーTは同一なので,スピン最多重度状態の安定性はパウリの排他原理による電子間斥力エネルギーV_<ee>の低下,すなわち交換エネルギーによる利得に原因する」と説明している.しかし,この摂動論的な説明はビリアル定理に違反する誤謬である.この経験則を正しく解釈することは,分子および固体の電子状態の実際の研究が経験則に大いに依存している点からも電子論の進展のために大切である. 分子のフント則の解釈については,H2,O2,C2などの低励起状態に対して,HFおよびCIによる研究が既に行われている.その結果,原子の場合と同様に,これらの分子の高スピン状態では,全て,V_<ee>は増加し,その安定性はV_<en>の低下に原因することが報告されている.一方CH2の基底状態については,HFおよびCI計算の結果から,高スピン状態で,V_<ee>は減少しV_<en>は増加しており,CH2は上記解釈の例外であると報告されている.しかしこの計算では高スピン状態と低スピン状態のエネルギー差に関するビリアル関係が全く満たされておらず,正しい解釈を与える計算精度には達していない. 本研究では,CH2の基底電子配置から生じる三重項と一重項に対して,ビリアル定理を高精度で満たすHFおよびCI計算を実行した.この2つの計算結果から,CH2は例外ではなく,高スピン状態では,V_<ee>は増加し,その安定性はV_<en>の低下に原因することが判明した.
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