2007 Fiscal Year Annual Research Report
半導体および半導体量子構造における電子スピン・核スピンダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
05J04989
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松坂 俊一郎 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電子スピン / スピンホール効果 / 顕微カー回転測定 |
Research Abstract |
本年度は,前年度までに構築した高感度高空間分解能を有する顕微カー回転測定系を用いて,n型GaAsにおけるスピンホール効果について,ドーピング濃度依存性や温度依存性など,系統的な実験を行って調べた. 試料にはドーピング濃度N_Dを絶縁体的な領域(N_D=3×10^<16>cm^<-3>)から金属的な領域(N_D=5×10^<17>cm^<-3>まで変化させたn型GaAsチャネルを用意した.スピン蓄積の空間マッピングには,顕微カー回転測定系を用いて,チャネルに電流を流した時のカー回転角の外部磁場依存性について空間分解測定を行った. 用意したすべての試料において,電流と垂直方向のチャネル端付近でのみ,カー回転角が磁場を面内に印加するに従って減少することから(Hanle効果),スピンホール効果を検出した.スピンホール効果のドーピング濃度依存性の結果から,チャネル端におけるスピン蓄積量がドーピング濃度に対して単調には変化せずに,N_D=1×10^<17>cm^<-3>において最も大きくなることを観測した. この結果を,実験から同時に得られたスピン緩和時間と,スピン拡散長およびスピン拡散定数を用い,ドリフト拡散モデルにより解析したところ,ドーピング濃度が増すに従ってスピンホール導電率が増えていることを示唆する結果を得た.この解析結果により,n型GaAsにおけるスピンホール効果はスピン依存散乱が支配的と考えられ(外因性),ドーピング濃度が増えるに従って散乱確率が大きくなり,生成されるスピン流は大きくなることが実験的に示された.また,ドーピング濃度が増えるに従って電子がより大きな運動量を持つために,スピン緩和時間は小さくなる(D'yakonov・Perel'スピン緩和機構)ことを考慮すると,スピン蓄積量はドーピング濃度に対して極大値を持つと考えられ,本実験から,その極大値がN_D=1×10^<17>cm^<-3>周辺で与えられることが明らかになった.
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Research Products
(3 results)