2006 Fiscal Year Annual Research Report
成体脳のニューロン新生に関与するPax6の機能解析
Project/Area Number |
05J05015
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
櫻井 勝康 東北大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アストロサイト / Pax6 |
Research Abstract |
中枢神経系において、アストロサイトは最も多く存在する細胞であるが、その発生、構造や機能の多くは明らかにされていない。成体脳においてアストロサイトの詳細な観察を行った結果、様々な領域に存在するアストロサイトのほぼすべては、Pax6陽性であることが明らかとなった。本研究では転写因子Pax6がアストロサイトの増殖や分化にどのように関わっているかについて、in vivoおよびin vitroの解析を行った。 アストロサイトにおけるPax6の機能を明らかにするために、胎齢18日の野生型およびPax6変異ホモ接合マウスの大脳皮質を用いて、アストロサイトの初代培養を行った。その結果、ホモ接合マウス由来のアストロサイトは野生型に対し、細胞増殖が有意に増加していた。また、分化マーカーであるGFAPの発現が野生型由来のアストロサイトに比べ、ホモ接合マウス由来のアストロサイトにおいて減少していることが明らかとなった。これらin vitroの結果より、Pax6がグリア新生に関与していることが考えられたので、次にPax6がグリア新生を制御するのかをin vivoにおいて調べた。Pax6変異ホモ接合マウスは生後まもなく死亡してしまい、グリア新生が出生前後で起こる大脳皮質では解析が困難なため、大脳皮質よりも発生の早い脊髄において野生型およびPax6変異ホモ接合マウスのグリア新生を観察した。Pax6は脊髄においてもアストロサイトおよびアストロサイト前駆細胞に発現していた。アストロサイト前駆体の出現時期を前駆体のマーカーを用いて観察したが、グリア新生開始のタイミングに違いは認められなかった。興味深いことに、アストロサイト前駆細胞の増殖は胎齢16.5日で野生型に比べホモ接合マウスにおいて有意に増加していたが、胎齢14.5および18.5日では違いは認められなかった。さらにGFAPの発現量が胎齢16.5および18.5日のホモ接合マウスにおいて減少していた。これらの結果から、Pax6はアストロサイトの増殖および分化を制御していることが示唆された。
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