2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J05050
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 英博 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 学習 / 記憶 / 脳 / 嗅覚系 / 唾液分泌 / 昆虫 |
Research Abstract |
以前に私はゴキブリの匂い刺激に対する唾液分泌がその匂いと味刺激の対提示を繰り返すことによって上昇すること、またこの唾液分泌応答の変化は唾腺ニューロン応答の変化より容易にモニターできることを報告した。なお、この結果については本年度に論文として報告し、「パブロフのゴキブリ」としてScience誌やNew York Times誌などでも広く一般に報道された。本年度は前年度に引き続き、学習実験系の改良として、匂い、味刺激共に触覚に提示する学習訓練の効果についても精査した。結果、砂糖水や食塩水を触角に提示する訓練を繰り返した場合では匂い記憶が成立するが、機械刺激や水刺激を匂い刺激と対提示した場合では匂い記録が成立しないことがわかった。この結果については、第8回国際神経行動学会で発表し、学会賞という高い評価を受け、論文としてもNeurobiology of Leaning and Memory誌に採択済みである。さらに、この触角への条件付けの実験系を用い、学習・記憶の神経機構を解明するため、脳内局所領域への薬物の局所投与実験を進めた。昆虫の脳内匂い情報処理過程において、重要な役割を果す神経伝達物質であるアセチルコリンの阻害剤(メカミラミン)を局所投与し、その匂い学習への効果を調べた。結果、一次嗅覚中枢である触角葉や高次嗅覚中枢であるキノコ体に薬物を投与した場合では匂い記憶は成立しなかったが、異なる高次嗅覚中枢である前大脳側葉に局所投与した場合では匂い記憶は成立した。嗅覚情報処理経路とこの結果を合わせて考えることによって、匂い情報と味情報の連合学習はメカミラミン感受性のキノコ体の内在細胞(ケニオン細胞)で起こることがわかった。この結果については第78回日本動物学会で発表し、追加実験が済み次第、論文として投稿予定である。
|
Research Products
(5 results)