2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J05050
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 英博 東北大学, 大学院生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 学習 / 記憶 / 脳 / 唾液分泌 / 昆虫 |
Research Abstract |
以前に私はゴキブリの唾液分泌を支配する唾腺ニューロンの匂いに対する応答が、その匂いと味刺激の対提示を繰り返すことによって上昇することを報告した。しかし、この唾腺ニューロンの応答の変化が実際の行動、つまり唾液分泌に対して、どのような影響を及ぼすかは依然として不明瞭であった。この問題を解決するために条件付けに伴う実際の唾液分泌量の変化を測定した。その結果、触角に匂いを提示した直後に口部に砂糖水を与える訓練を繰り返すと、確かに砂糖水と連合させた匂いに対する唾液分泌量が上昇することを発見した。その一方で条件付け中に単独で提示した匂いに対して、ゴキブリは何の反応も示さない。この結果はパブロフの発見以来、初めてヒトとイヌ以外の生物で見出された唾液分泌の条件付けである。この結果については、第77回日本動物学会で発表し、現在論文として投稿中である。また、前年度に引き続き、学習実験系の改良として、匂い、味刺激共に触覚に提示する学習実験系の効果についても精査した。前年度に私は触角に匂いを提示した後に砂糖水を触角に提示する訓練を繰り返した場合でも匂い記憶が成立することを示した。この実験に引き続き、本年度行った様々な対照実験により、匂いと機械刺激や水刺激を触角に対提示した場合では学習が成立しないことがわかった。この結果は昆虫が触角レベルで高い感覚刺激識別能力を有していることを示しており、触角での感覚神経の投射の研究と合わせ、昆虫の脳内での学習・記憶機構の解明に役立つと考えられる。なお、この研究については第29回日本神経科学大会および、第28回日本比較生理生化学会で発表し、現在論文として投稿準備中である。なお、現在は昆虫の脳内での学習・記憶の座および感覚情報処理経路を解明するために、脳内への薬物の局所投与実験を進めている。
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Research Products
(3 results)