2005 Fiscal Year Annual Research Report
肝芽形成過程における血管内皮細胞由来因子の機能解析
Project/Area Number |
05J05127
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松本 健 熊本大学, 発生医学研究センター, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 発生 / 肝臓 / 血管内皮細胞 / Wnt |
Research Abstract |
近年、血管内皮細胞に発現するFlk1遺伝子の機能欠損マウスの解析により、血管内皮細胞が肝臓内胚葉の増殖・分化に必須であることが示唆された。しかし血管内皮細胞に発現し、肝臓内胚葉の増殖・分化を制御する分子機構は理解されていない。すでに我々の研究室はニワトリWnt9aが肝芽形成過程の血管内皮細胞に発現していることを発見している。Wnt9aは液性分泌因子であることから、肝臓内胚葉に作用し、肝臓の発生を制御する事が考えられた。この仮説を検証するために、私はニワトリ胚での内在性Wnt9aの機能阻害をShRNA発現レトロウイルスを用いておこなった。この実験系においてWnt9amRNAの減少が確認され、Wnt9aの機能阻害により肝臓の体積、質量が減少することがわかった。これらの形態変化はPCNA抗原の染色、BrdUの取り込み等を用いた解析により、細胞増殖の低下によるものであると結論づけた。よってWnt9aは適切な肝臓発生に必要であることが示された。付け加えて既に報告されているFlkシグナルとWnt9aシグナルの相関性を調べるために、両者のシグナル阻害実験をニワトリ胚でおこない、それぞれの転写量の変化を調べた。その結果、VEGF/Flkシグナルを遮断する分泌型Flk-1を過剰発現させた肝臓において顕著なWnt9amRNAの発現量の低下が観察された。同様にWnt/canonicalシグナルのアンタゴニストであるDkk-1を過剰発現させた肝臓においてFlk-1mRNAの発現量の低下がみられた。これらの結果からWnt/canonicalシグナルとVEGF/Flkシグナルは機能的な相関性があり、互いのシグナルの相互作用が発現維持に必要であることが示唆された。興味深いことに両方のシグナル阻害をおこなった肝実質細胞において、顕著な中性脂質の取り込みの減少が観察された。これらの結果を併せて考えるとWnt9aは肝実質細胞の増殖だけでなく、脂質の取り込みなどの細胞分化を制御する肝臓発生過程の多段階に必要である因子であることが示唆された。
|