Research Abstract |
本研究プロジェクトは新しいホスト-ゲスト化学を目指すもので,官能基を規則正しく集積化させた界面を創出し,優れた分子形状識別を引き出すことを目的としている。具体的には,配向構造転写型ホスト高分子を作製し,主に液体クロマトグラフィー(HPLC)を駆使してその分子形状識別能を評価する。 本年度は,脂質類似化合物として相互作用しうる官能基と配向性を併せもつモノマーを分子設計し,その高分子化を実施した。また,得られた脂質類似ポリマーを数μmのシリカ粒子にコーティングし,その配向特性を調査した。さらに,同シリカをカラムに充填し,標準炭化水素類や多環芳香族類をゲスト分子としたHPLC測定により分子識別能を評価するとともに,ジアステレオマー分離の本質的問題を解決しうる分離カラムへの応用を検討した。得られた主な結果を以下にまとめる。 1.合成した脂質類似ポリマーはシリカ表面上でもフレキシブルであり,温度によって可逆的な配向-ランダム間の相転移を示すことが確認された。また,それに伴って分子形状識別能が明確に変化し,低温下で極めて高い選択性を発現することが明らかになった。 2.同ポリマーはシリカ粒子へ多重的に固定化することで,そのフレキシビリティーを制御することが可能で,条件を最適化することで最終的に通常使用されているカラムの約5.3倍の分子平面性識別能を引き出すことに成功した。 3.さらに,東北大,赤坂助教授らが開発した高性能ジアステレオマー化剤と併用することで,一般に分離困難とされている長鎖アンテイソアミン,長鎖アンテイソ酸,長鎖二級アルコールを分離することに成功した。また,分離条件を検討することで,分離可能温度を約40℃引き上げることができ,通常の条件下での分離が達成された。
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