2006 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理シミュレーションによるナノ構造化グラファイトの水素吸蔵機構の解明
Project/Area Number |
05J05276
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
原田 晶子 広島大学, 大学院総合科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | グラファイト / 水素吸蔵・放出 / 分子動力学シミュレーション / 第一原理 / ナノ構造 |
Research Abstract |
本研究では、ナノ構造化グラファイト(グラファイトを水素雰囲気中でミリング処理して得られる、ナノメートルスケールでグラファイト層構造が残った物質)の水素吸蔵機構を解明するため、第一原理分子動力学法を用いたコンピュータシミュレーションを行ってきた。昨年度は、水素化したナノ構造化グラファイトのモデルとしてグラファイトのアームチェアエッジに水素原子が結合したモデル系を考え、第一原理分子動力学シミュレーションを適用した。その結果、実験で報告されているグラファイト再結晶化をシミュレーションで再現し、温度2000Kで水素分子が脱離する素過程を明らかにした。本年度は、水素分子脱離過程の詳細な解析を行うとともに、他の水素吸蔵状態について調べるため様々なモデル系でのシミュレーションを行った。 (1)これまでに明らかにした、 1.水素を吸蔵したナノ構造化グラファイトの再結晶化 2.結合状態がエッジ部分からグラファイト面上へと変化 3.水素分子の脱離 という過程において、系のエネルギー変化の詳細な解析を行った。その結果、再結晶化によりエネルギーが一原子あたり約0.1eV減少すること、また、水素分子脱離の過程においてもエネルギーが0.1eV程度減少することを明らかにした。 (2)これまでは、アームチェアエッジに水素原子が結合した系を考えていたが、本年度はジグザグエッジに水素原子が結合したモデル系を考え、第一原理分子動力学シミュレーションを適用した。その結果、水素-炭素原子間の振動モードは、アームチェアエッジよりもジグザグエッジに結合した原子の方が振動数がわずかに大きく、また、水素原子が複数結合した場合は、アームチェアエッジに結合した原子の方が水素原子間相互作用による揺らぎが大きいことなどを明らかにした。 これらの結果から、ナノ構造化グラファイトに共有結合した水素原子の結合状態と水素分子脱離までの一つの流れを明らかにすることができた。
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Research Products
(1 results)