Research Abstract |
本年度は,主に,沿岸地下水中での窒素浄化機構の解明を自的とし,以下のとおりに実施した. 1.試験流域として,瀬戸内海沿岸の島嶼部に位置する農業流域を設定し,それらの流域において,沿岸地下水中で硝酸性窒素濃度の減衰が起こることを確認した.また,その現象には,海水等による希釈作用の影響のみではなく,脱窒による自然浄化機能が大きく寄与している可能性が高いことが明らかになった. 2.(1)で得られたデータを基に,流域における窒素収支計算を行い,沿岸地下水中での硝酸性窒素浄化能の評価を行った.その結果,流域に対する肥料起源の窒素インプット量のうち約10〜40%が地下水中で消失していると見積もられた. 3.試験流域において,地下水中での窒素安定同位体比の分布を確認した.その結果,深度約20〜30mの比較的深い地下水においては,沿岸域で,硝酸性窒素濃度の減少にともない同位対比が上昇する傾向がみられ,脱窒反応による同位体濃縮を示唆する結果を示した.また,同位体比の値から,試験流域における地下水中の窒素の起源は,主に化学肥料と家庭排水であることが推定された. 4.以上の研究成果について,国内の学会(計3件),および国際会議(計1件)において発表を行った. 以上の結果を踏まえ,2年目となる来年度は,今年度に引き続き,現地における地下水のモニタリングを行うとともに,現地試験による脱窒反応の検証およびモデル計算による地下水流動のシミュレーションを行い,窒素浄化過程の時空間的変動について,明らかにしていく予定である.
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