2006 Fiscal Year Annual Research Report
対人恐怖症や統合失調症等にみられる自我漏洩感の維持プロセスの解明と治療法の開発
Project/Area Number |
05J05375
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 淳 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自我漏洩感 / 対人恐怖症 / 統合失調症 / 対処方略 / 認知行動療法 |
Research Abstract |
自我漏洩感とは、対人恐怖症や統合失調症等に広くみられる重要な症状であり、自分の内面的な情報(感情や思考)が他者に伝わったと感じる体験である。また、日本特有にみられる症状とされることが多く、これまで実証的な研究が行われてこなかったため、治療法開発に至っていない。本研究の課題は、この自我漏洩感による苦痛を長びかせる要因(維持要因)を対処方略の観点から明らかにすることが目的である。そのため、まず8つの下位尺度をもつ自我漏洩感対処方略尺度が作成され、信頼性・妥当性の高いことが確認された。そして、自我漏洩感の苦痛を和らげる対処方略や自我漏洩感の苦痛を高める対処方略を同定しており、治療法開発への準備が整ってきた。 平成18年度は、自我漏洩感の治療法への更なる示唆を得るために、文化精神医学で世界的に著名なカナダ・モントリオールのMcGill University (Division of Social and Transcultural Psychiatry)において研究をおこなった。一ヶ月間のサマーコースにおいて、文化精神医学概論、文化精神医学における量的研究法、質的研究法などについてのワークショップやレクチャーを受け、比較文化的な研究手法を習得し、毎週開催される症例検討会や研究会などから治療法に対する示唆を得た。また、対人恐怖症研究で著名なLaurence J. Kirmayer教授の指導のもと、自我漏洩感の維持メカニズムをはじめ、発生メカニズムや症状学について議論を深めた。今年度の滞在で行われた研究は、英文雑誌への投稿を予定している。
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Research Products
(5 results)